「フェミニストって、なに?」座談会【前編】ネットでヒステリックで怖いと言われるのはなぜ?
――『NEW ERA Ladies』と『禁断の果実』のどちらも、イラストやデザインが楽しいです。社会に対しての“怒り”を全面に感じさせない印象を受けました。
相川 めちゃくちゃ怒っていますよ! でも、入りやすさはあるかもしれません。
KIKI 私たちもかなり怒っていますね。ただ、手に取ってもらいやすいよう意識して制作しています。
宮越 『禁断の果実 女性の身体と性のタブー』はコミックだし読みやすそう! と思って手に取ったんですけど、「女性器に興味を持ちすぎた男ランキング」を読んだ時に、これって私たちの“怒り”とものすごく共通している部分じゃないかなって。ユーモアがあっても“怒り”の感情は隠さないってところ。
相川 多分、現代の日本って怒りがすごく悪い感情と思われているんです。ちょっとでも“怒り”が見えると、読者に引かれてしまうという話を聞いたことがあります。
――『NEW ERA Ladies』を初めて拝見した時に、とにかくかわいい! と思いました。すごくとっつきやすいです。
宮越 楽しそうな見た目でだますのは、デザインの力技です(笑)。「マチズモ(男性優位主義)おじさんの悪口が書いてあります」って言いながらZINEを手売りすると、びっくりしながらもとりあえず面白そうだからって手に取ってもらえます。でも、基本は怒っているし、本当は工夫なんてしなくていい。「手のひらでうまく転がす女性」を求める風潮は受け入れません。
KIKI 怒りと笑いも対極にあるものではなくて、表現次第で境界も結構ぐちゃぐちゃにできるんじゃないかなって。怒りを突き詰めると笑いになるとか、真面目さを突き詰めると笑いになるとか、そういうことって結構あると思っていて。まあ、ストレートな怒りを受け止められない方に問題があるのは前提ですが。
赤谷 “怒り”という感情は、同じ問題意識を持っている者同士はとてもつながりやすい。でも、その怒りをまったく共有・共感できない相手とはなかなか通じないんだと感じたことがあります。その人たちとわかり合うための工夫はいるかなと。だからといって怒りがダメだとはまったく思っていません。日々、怒りのアクセルを踏みまくっている。
宮越 まりえさんが言ってたみたいに、怒りの根本を理解している人や、共有できる人に届けることはもちろん大事なんだけど、それ以外の人たちに伝えるためには、確かに工夫を求められるケースもありますね。
相川 伝え方が大事っていうのもあるけど、“怒り”を持つことが、すごく正当な場面ってあるじゃないですか。怒って当たり前という場面があるということを同時に伝えたいなと思っています。それこそ、フランス革命とか社会が変わる時って、怒りのパワーで変わってきた。優しく丁寧に言っているだけで、聞いてもらえるかっていうと、必ずしもそうじゃない。「怒るのはダメ」というのは、口を塞ぐということですし、気をつけないとって思っています。