【最も怖いホラー映画・10選】『IT』だけじゃない、米カルチャーメディアで高評価作品!(後編)
欧米では一昔前まで、夜が長くなってくるハロウィンから冬にかけてホラー映画を見るのが定番だったが、現在では季節に関係なくホラー映画が公開されるようになり、ここ数年は空前のホラー映画ブームが到来。今年はホラー映画の当たり年ともいわれている。
しかしホラーといっても、サイコスリラー系、幽霊系、殺人鬼系、モンスター系、ゾンビ系、ドール(人形)ホラーなど、ジャンルが細かく分かれている。画で恐怖を植え付けるスプラッタものや、反対に精神的に怖がらせるものもあり、実に奥が深いジャンルなのだ。
今回はアメリカのカルチャーサイトのランキングを参考に、「最も怖いホラー映画」10作を選出した。なお、誰もが知る往年の名作ホラーがランキング上位を占めることもあり、今回は2015年以降に公開されたものを対象とした。
最も怖いホラー映画6:『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(17)
ホラー小説の巨匠スティーブン・キングの代表作で、90年にテレビドラマ化された『IT』を、ホラー映画『MAMA』で知られるアンディ・ムスキエティ監督が映画化。
平和かつ静かな街で、児童失踪事件が相次いで発生。内気な少年の弟もある日、おびただしい血痕を残して消息を絶ってしまう。自分を責める少年の前に、何の前触れもなく“それ”は現れる。恐怖を感じるたびに“それ”は姿を現す。“それ”が見える少年たちと共に“それ”に立ち向かおうとするのだが、彼らをさらなる恐怖が待ち構えていた……。
欧米ではピエロ恐怖症というものがあり、本作のポスターを見ただけで恐怖心を感じる人が続出。北米の興行収入は、大ヒット映画『シックス・センス』を超える3億2,748万ドル(約360億円)で、ホラー映画史上ナンバーワンの大ヒットを記録した。
少年たちが最も恐れているものと対峙し、そして、彼らが団結して“それ”に向かう描写は見ごたえ十分で、ホラー版『スタンド・バイ・ミー』と高く評価されている。現在、27年後を描いた続編『IT/THE END “それ”が見えたら、終わり』が公開中。
最も怖いホラー映画7:『ワイルドリング 覚醒する少女』(18)
『ワイルドイング 覚醒する少女』の主人公は、「部屋の外に出ると、人間を食べる野獣ワイルドリングに襲われる」と脅され、森の山小屋の一室に閉じ込められて育った少女。しかし彼女を育ててくれた“パパ”は彼女が初潮を迎えた頃からおかしくなり、拳銃自殺を図る。山小屋から救出された少女は女性保安官に引き取られたのだが、本格的に思春期を迎え、本来の姿へと覚醒してしまう。
少女が狼女のようなワイルドリングへと変貌した姿は恐怖。プレミア上映したカルチャーイベント「サウス・バイ・サウスウエスト」では、好評を得た。米紙「ニューヨーク・ポスト」は、「巧みに描かれた作品」「(少女役を演じた)ベル・パウリーの表情豊かな顔が印象的だった」と高く評価した。
最も怖いホラー映画8:『ヘレディタリー/継承』(18)
家長である祖母の死後、ありとあらゆる恐怖に見舞われる一家を描いたファミリーホラー。カルト系にも属する、とにかく不気味なホラー映画だ。
母を亡くし、喪失感を拭えずにいる中年女性アニー。夫や子どもたちと日常を取り戻そうとするが、娘は徘徊や動物虐待などの異常行動を見せ始め、家の中でも聞き慣れない音や、不可解な光などが襲ってくる。そして、息子が取り返しのつかない事件を起こしてしまい……。
とにかく役者の演技力が素晴らしく、最初から最後まで恐怖心をあおる。ラストに登場するカルト集団も不気味だが、子役たちの恐怖演技、そして異常現象などの描写が見事だ。悪霊、心霊現象とトラウマになる恐怖シーンが満載で、ホラー映画ファンの欲求を十分に満たしてくれる。
本作は、サンダンス映画祭でプレミア上映された直後から大絶賛され、「ロッテン・トマト」の批評家支持率も89%と高評価を獲得。米紙「USA Today」では、「現代ホラーの頂点」と称された。また、ホラー映画専門誌が主催する映画賞「ファンゴリア・チェーンソー・アワード2018」では最優秀賞、監督賞、女優賞などの6部門で受賞している。