NHK『ねほりんぱほりん』インフルエンサーの実態――SNSで生まれる“闇”“マウント”の背景とは
インフルエンサーはフォロワーそれぞれにコメントを返したりできるため、自らの努力次第で信用度が高くなる。つまり、エンゲージメント(※SNSの投稿に対するフォロワーの反応)が高く、口コミの拡散力が高いのだ。「全米が泣いた」よりも「インフルエンサー◯◯ちゃんのオススメ」のほうが効果があり、それ故にインフルエンサーが仕事として成り立つというわけだ。
彼女たちは「ケーキを紹介して」と依頼された場合、いくらまずくてもけなすことはできない。そこで、「盛り付けが斬新」「内装がかわいかった」などと取り繕うという。また、「『子どもにも食べられる辛さ』と言って」という依頼がきた場合も、実際に辛すぎると思っても「辛すぎる」「マズい」は一切書けないので、「お子さんでもいける子はいけるかも」などと書くそうだ。
10代の子たちに聞くと、口々に「広告は信じられないから、買い物の前には絶対にSNSで口コミを調べる。はずしたくないから、口コミで評判がいいものを買う」と言う。その子たちがこれを聞いても、本当にSNSの口コミは信じられると言えるだろうか。いくらコメントを返してくれていい人に見えても、彼女たちはインフルエンサーであり一般人ではないのだ。
以前、ある口コミサイトで、評価がお金で買えるということが話題となった。お金の影響が一切ない純粋な評判を知ることなんて不可能かもしれないと感じてしまった。
インフルエンサービジネスは時代のあだ花か
英王立公衆衛生協会(RSPH)によると、若者の心の健康に一番悪影響を与えるSNSはInstagramとされている。
Instagramのインフルエンサー二人は、何をしていても「(投稿するための)写真撮らなきゃ」と思うという。プライベートがなくなり、感動もなくなるそうだ。まさに、Instagramを使うのではなくてInstagramに使われている。
Twitterのインフルエンサーも、「フォロワーが増えるにつれてエゴサーチと悪意が増える」という。自分の名前で検索して悪口をずっと見てしまうそうだ。どちらもまったく精神衛生上よくないことは明らかだ。
インフルエンサーになるためには、計算と努力をすればなんとかなりそうだ。しかし、今回の放送を見て、「インフルエンサーにはなりたくない」と思った方も多いのではないか。もちろん、インフルエンサーにも素晴らしい人はいる。しかし、インフルエンサービジネスは時代のあだ花なのかもしれない。
高橋暁子(たかはし・あきこ)
ITジャーナリスト。LINE、Instagram、Twitter等のSNS、10代のSNS利用、情報リテラシー教育が専門。『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著書、メディア出演多数。