松本人志、「嫁とカネ」の話に募る不安――「遺言状を書いておくべき」と進言したいワケ
どうして、後妻業が疑われるような遺産相続トラブルが起きるか。実務面で言うのなら、結婚や養子縁組をオープンにしないからだろう。相続の権利がある人に遺言の存在が周知されず、親類は不信感を持ちやすくなる。
庶民の間でも、「遺言書がなければ、揉める」「遺言書があっても、内容次第で揉める」ということは浸透しているのに、なぜ資産家の男性たちは、そういった準備をしないのか。スターということで極端に世事に疎いからとも考えられるが、根っこの部分にあるのは、「資産家の男性ほど、おカネの話をする女性が嫌いだから」という点ではないだろうか。
9月29日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)では、“紀州のドンファン”と呼ばれた資産家男性の遺産について放送された。70代の男性が、55歳年下のモデルの女性と結婚する。しかし、結婚からわずか3カ月後に男性は死亡。司法解剖の結果、男性の体内からは覚せい剤が検出される。事件の真相は謎のままだが、男性の遺言には、全財産を和歌山県田辺市に寄付すると書かれており、田辺市も寄付を受け入れることにしたと発表した。
同番組のコメンテーターは、ダウンタウン・松本人志。大物芸能人ということで資産家だろうが、松本が自らの遺産相続について、こう話していた。
「『あたしはお金は一切いらない』って嫁は言う」
その表情は、喜んでいるように私には見えた。恐らく、カネを欲しがらない妻を好ましいと思っているのだろう。しかし、「でも、お酒飲みだしたら、雰囲気変わってくる」「どっちが本当のお前なんや」とオチをつけていた。
芸人としてのネタかもしれないが、私には夫の遺産を拒否する妻の気持ちがわからない。というのは、妻が専業主婦であったとしても、結婚後の財産は夫婦二人のものだから。当然夫人はもらう権利はあるし、松本が亡くなって夫人とお子さんが生きていくのにカネは必要不可欠だろう。「一切いらない」は現実的ではない発言と言えるのではないか。
が、そういえばたかじんさんも同じような発言をしていたことを思い出す。『金スマ』によると、たかじんさんは夫人が献身的に看病してくれる姿を見て、「カネ目当てやない」とメモに書いて残していたそうだ。水を差すようで何だが、看病の真剣度とカネ目当てがどうかは、まったく別次元の問題ではなかろうか(たかじんさんの信頼を得るため、献身的を装うという作戦もないわけではない)。松本やたかじんさんの言動から考えるに、お金を持った男性というのは「カネは必要ないと言う、もしくはカネを欲しがるそぶりを見せない女性は、カネ目当てでない」と考えている部分があるのではないだろうか。
だとすると、資産家の男性と交際する女性は、空気を読んでお金の話を避けるようになる。しかし、共に暮らし、場合によっては看病もするのなら、男性亡き後、それ相応の保証をしてほしいと思うのは人情だろう。そのためには、自動的にお金をもらえるようにする法的手続き(養子縁組や結婚)を秘密裏に行うのが一番の得策。しかし、それが親族にバレると、結婚という大きな契約を内緒にされた側は不信感を持つ、というように、後妻業でなくてもそう思えてしまうという悪循環にはまっていくのではないか。
「どうして揉めないような遺言状を書いておかなかったのか」
芸能界で遺産相続トラブルが起こると、必ず誰かが口にする一言だが、「自分の死んだ後の話をされたくない」「カネの話をするオンナといたくない」という男性の繊細さ、もしくは小心さが、遺言状の作成にブレーキをかけているのではないか。芸能人としての栄光を傷つけないためにも、松本をはじめとした大物芸能人の皆さんは、健康なうちに遺言をしっかり書いておいていただきたいものだ。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。