松本人志、「嫁とカネ」の話に募る不安――「遺言状を書いておくべき」と進言したいワケ
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます
<今回の有名人>
「『あたしはお金は一切いらない』って嫁は言う」ダウンタウン・松本人志
『ワイドナショー』(フジテレビ系、9月29日)
直木賞作家・黒川博行センセイの『後妻業』(文春文庫)をご存じだろうか?
妻に先立たれた資産家の91歳の男性が、結婚相談所で知り合った69歳の女性と結婚する。しかし、その女性の目当てはカネで、男性を病気に見せかけて殺害し、遺産相続するということを繰り返していた。遺産を横取りされることに気づいた娘は、弁護士と事件を解明する……そんなストーリーの小説である。同書の解説によると、これは完全な創作ではなく、センセイの周辺で起きた同様の事件を小説家としての視点で膨らませたものだという。
その後、明るみになったのが、筧千佐子事件だ。結婚紹介所を通じて筧と知り合い、結婚した男性が次々と不審死を遂げる。筧はそのたびに遺産を相続するという、小説を地で行くやり方で私腹を肥やしていたのだ。
筧のような後妻業の女性がターゲットにするのは、高齢の資産家男性。となると、有名人や大物芸能人も狙われる可能性は大である。タレント・やしきたかじんさんが、食道がんの闘病中、自分の娘より若い30歳以上年下の一般人女性と結婚したが、2014年に亡くなった。たかじんさんの死後、夫人は後妻業ではないかと騒がれたことがあった。
『中居正広の金曜のスマたちへ』(TBS系)によると、二人の出会いはFacebook。夫人は当時イタリアに住んでいたが、所用のために日本に帰国した際、クリスマス合コンで初めて顔を合わせたという。かつて愛した女性とそっくりだったことから、たかじんさんは夫人に強く惹かれていくが、夫人はたかじんさんを知らなったそうだ。
たかじんさんの死後、さまざまな事実が明らかになる。「女性自身」(光文社)によると、たかじんさんのお母さんは、息子の結婚を知らなかったそうだ。初婚だと言われていた夫人の結婚は3回目。遺言書には、10億円と言われる遺産のうち、「OSAKAあかるクラブ」、大阪市、桃山学院にそれぞれ2億ずつ寄付し、残りの4億を夫人が相続すると書かれており、一人娘の取り分はゼロだったという。実の娘に相続させないという遺言は、かなり珍しいものではないだろうか。
芸能界はこの後も、後妻業かと疑われる相続が頻発する。たかじんさんと同じ14年、昭和の名優・高倉健さんが亡くなり、秘密裏に養子縁組した元女優が、高倉さんの遺言書に沿い、40億円もの遺産を相続したというのだが、養女は健さんの実妹にも高倉さんの死を知らせず、分骨も拒否したそうだ。なお、ノンフィクションライター・森功氏の『高倉健 七つの顔を隠し続けた男』(講談社)によると、高倉さんと養女の養子縁組の手続きには不審な点があるそうだ。高倉さんの本名は小田剛一(おだたけいち)だが、申請書のふりがなは、「おだごういち」になっていたというのだ。自分の名前を自分で間違えるとは、確かに考えにくい。