母親の万引きに利用された幼女――店長とGメンの心を揺さぶった「純真無垢」な言葉
こんにちは、保安員の澄江です。
さまざまなニュースサイトで報じられる万引きの事件記事を、日々チェックしている私ですが、ここのところ悪質な犯行が頻発しているように思います。最近は、特定の店舗に狙いを定めた窃盗団による系列店舗を狙った連続的な犯行が頻発しており、関係者は戦々恐々。いまや貧困を理由に万引き行為に至る者より、法の隙間を突いた計画的で粗暴な換金目的の犯行に徹する者が多く、その対応に限界を感じることも多くなりました。用いられる手口や犯行態様は、悪質かつ複雑化していて、現行法では対応しきれないような事案まで発生しているのです。なかでも、犯意を否定する目的で、罪に問われることのない年齢の子どもを利用する犯行は個人的に許せません。今回は、幼い我が子を利用して犯行に及ぶ万引き女についてお話ししたいと思います。
当日の現場は、東京のベッドタウンに位置する生鮮食品スーパーL。ここは団地に囲まれた地域密着型の中規模スーパーで、いわゆる“荒れている”中学校や外国人向けの日本語学校が近隣にあることもあって、相当数の常習者を抱えている状況にあります。1日入れば、一人は挙がる。私たちから言わせれば、そんなイメージの現場だと言えるでしょう。ところが、この日は、生憎の雨。来店者が少なく、特に変わったことのないまま、後半の勤務を迎えることになりました。天候の悪い日は、万引きする人が少ないのです。
夕方のピークを迎えて、少し賑わい始めた店内を流すように歩いていると、30代前半と思しき太めの女性に、引きずられるようにして歩く小さな女の子の姿が目に止まりました。まだ3歳くらいでしょうか。足元のおぼつかない女の子を連れているにもかかわらず、子どもがあたふたするくらいの早足で歩く彼女の姿が、どこか異様に見えたのです。彼女の背中には、生後半年に満たないくらいに見える赤ちゃんも背負われており、激しい歩調に合わせて体を大きく上下させていました。遠目から見ると、もぐらたたきを彷彿させる動きで、とても居心地が悪そうに見えます。
(なにを、そんなに慌てているのかしら……)
すれ違いざまに彼女の人着を確認すると、どことなく喪黒福造さんに似ている感じの女性で、色あせたグリーンのジャンバーと、靴底が擦り切れて外側に向けて繊維が放出されているサンダルが目につきました。女の子の着ている白いワンピースも薄汚れてグレーがかっており、プリキュアがプリントされたピンクの靴までもが泥だらけの状態で、二人共に相当の不潔感を放っています。