『しゃべくり』『今くら』……「この人、誰?」ゲストが示すマス(大衆)の限界
9月9日放送の『しゃべくり007』(日本テレビ系)を見て、「おや?」と思った人は多いだろう。前半ゲストの元AKB48・前田敦子の後にゲストで登場した人物について、「え?誰?」「まじで、誰?」「誰かわかんないけど、嵐の話してる」とネット上に声が飛び交った。それもそのはず、地上波ではほとんど見かけない男性だったのだ。
「元ラグビー選手で元日本代表主将でもあった廣瀬俊朗です。先日、最終回を迎えた日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』(TBS系)に登場するラグビー選手・浜畑譲役で俳優デビュー。経験者による本物のプレーが感動を呼びました。今回の日テレ出演は、異例の他局ドラマの番宣でしたが、ラグビーを盛り上げたい日テレの思惑と合致したのでしょう。ちなみに、嵐・櫻井翔は廣瀬と慶應義塾大学で同級生だった縁から、最終回に登場しています」(芸能ライター)
ドラマを見ていない者にとっては、初めて見る顔だったのだろう。だが実は最近、『しゃべくり』では、こうした知名度の低い人物がゲストに登場するケースが増えている。
「6月10日放送回に若手女優・関水渚が単体で登場しました。初主演映画の宣伝を兼ねていたのですが、正直お茶の間は『誰?』状態。また、4月29日放送には、アイドルグループ『ゆるめるモ!』あのが登場。一流豪華なゲストがトークを披露するという『しゃべくり』の番組イメージからは、程遠い人選といえるでしょう」(同)
また、同局の『今夜くらべてみました』に登場するゲストに関しても、「誰?」状態に陥る人は多いだろう。
「4日放送回は、『意外と地味な愛知女』ということで愛知県出身の女性タレントが登場。“名古屋イチ可愛いJK !Popteen専属モデル”という肩書で、生見愛瑠(ぬぐみ・める)という女性が出てました。同誌の読者には絶大な支持を集めているとのことで、ネット上ではファンから『めるる、ばり可愛い!』『めるたん可愛すぎました~!』などの声が上がったものの、一般層は無反応の様子。ちなみに、愛知のデートスポットの話題になったとき、突然『私、マジ、デートしたことなくて。あたしー』と発言。指原莉乃に『してても、していなくてもいいんですけど、聞いてないんですよ、そんなこと』と冷たくあしらわれていました」(同)
また同番組の8月14日放送回のテーマは「変わり者天才音楽女子」で岩本梨々愛、上原りさ、木嶋真優、松岡みやび、山中千尋、盧佳那といった音楽家が登場。木嶋は、『人生が変わる1分間の深イイ話』(同)『ジャニ勉』(関西テレビ)『うたコン』(NHK)など数多くの番組への出演経験があるため、そこそこ知られているものの、他5人はお茶の間のほとんどが「はじめまして」状態だ。
どんなゲストでも、ある程度“おいしく”なる構成力と、番組MCの技量でなんとか成立しているが、なぜ日テレは、ネームバリューの低いゲストをトーク番組に呼ぶのだろうか?
「まずは致命的なタレント不足。もはや、どのチャンネルも同じ顔ばかりが増えています。タレントがブレークすると、たちまちオファーが殺到して年間出演本数も200本以上と跳ね上がる。それにより消費速度も速くなり、旬の人気タレントを使い回すことで番組を活性化させてきた日テレとしては、新しい人材を発掘することは緊急課題なのです。またSNSの時代、そのコミュニティーだけの、非常に“局地的人気”の人間が増えていることも、ゲスト選びを難しくしている背景にあります」(放送作家)
タレントの消費スピードの加速化と、コミュニティーの細分化。日テレのゲストが示す状況は、つまるところマス(大衆)に向けたメディアの限界なのかもしれない。
(村上春虎)