覚醒剤、万引、パパ活、整形――少年院の少女たちの事情【元レディース総長・中村すえこ×刑務所のアイドル・Paix2】
元レディースの総長で少年院送致の経験もある中村すえこさんが監修・監督を務めた教育映画『記憶 少年院の少女たちの未来への軌跡』が完成、上映会が続いている。映画では、少年院を出院(≒卒業)する直前の4人の少女が中村さんに収容の経緯や今の思いを明かし、一部に再現ドラマも織り込んだ。今回、少年院や刑務所の慰問で「Prisonコンサート」を続けている“刑務所のアイドル”こと女性デュオPaix2(ペペ)と、中村さんの対談で、少女たちの更生について話してもらった。
■「こんな少女たちがいる」と知ってほしくて
――この映画には、佳奈、沙羅、美和、遥香(いずれも仮名)の4人の少女たちが登場します。佳奈は乳児院と児童養護施設で育って覚醒剤にまで手を出し、沙羅は薬物依存症で生活保護を受けている母のために万引を続け、美和は整形手術を繰り返し、「パパ活」で稼いだ600万円をホストに貢ぎ、遥香は男の言いなりになって美人局に加担して検挙され、それぞれ少年院に収容されました。顔にはモザイクがかかっていますが、少女たちの「記憶」はとてもリアルに伝わってきますね。
中村すえこ(以下、中村) そうなんです。私は少年院の出院者を支援する団体「NPO法人セカンドチャンス!」の活動として全国の女子少年院を回ってきたのですが、今どきの「不良少女」たちの抱える複雑な事情は、私の子どもの頃とは違うなと実感しています。私の頃はなんでも暴力で解決して、もっと単純だった気がします(笑)。
収容の期間を終えて出院したところで、少女たちが社会で生きていくにはハードルがたくさんあります。直接助けてあげられなくても、まず「こんな子たちがいるんだ」と多くの方に知ってほしくて、ドキュメンタリー映画を作りたいと考えてきました。
――中村さんの少女時代を綴った著書『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(ミリオン出版)も映画化されていますね。
中村 はい。この時に「映画の発信力ってすごいな」と思ったんです。今回は法務省にも協力をいただいているので、かなり突っ込んだ取材ができました。全部で110分と長めなんですが、カットしたくない場面もたくさんありました。