カルチャー
インタビュー【前編】

『ゆるキャラグランプリ』“選挙資金”は1,500万円!? 「金と政治力」がモノを言う争いの裏側

2019/08/29 16:00
番田アミ

――『ゆるキャラグランプリ2018』では、各自治体による“組織票”が問題視され、全国紙でも報じられました。ここに参加すると思うと、確かにリスクしかないような気がします。

犬山 もともと『ゆるキャラグランプリ』は、自動プログラムによる水増し投票の技術力争い、みたいな側面があったんです。ここ数年は運営側のチェックも厳しくなりましたが、昔は投票の季節になると、IT会社が自動プログラムを自治体に売り込んでくることもあったそうです。上位に入るには、自動プログラムを組み、さらに組織票を積む必要があったんです。運営が表立って「組織票OK」とは言いませんが、上位キャラたちは、できることすべてを駆使した状態で、一般票をどれだけ上乗せできるか、という次元で勝負していると思います。

――それって、思いっきり“不正”じゃないですか……。

犬山 一般的に見たらそうですよね。なので、大会が大きくなるにつれ、自動プログラムからの投票を運営側ではじくようになりました。だから昨年は、“人力”による組織票に移行したという経緯があります。それがパワハラに近い形で「無理やり投票させられた」という告発につながり、問題が大きくなったのではないでしょうか。

――そこまで行政が『ゆるキャラグランプリ』に加熱する理由は何でしょうか。

犬山 税金を使っていますから、成果を出さないと“税金泥棒扱い”されたり、翌年から予算が付かなくなったりするので、必死にならざるを得ないのでしょう。とはいえ、無理強いさえしなければ、熱心なファンによる投票と組織票も「清き一票」に変わりありません。『ゆるキャラグランプリ』は人気投票ではなく、「愛の深さ」や「やる気」を競い合うゲームだと思えば、このような仕組みにも納得できるのではないでしょうか。
(番田アミ)

(後編に続く)

■犬山秋彦(いぬやま・あきひこ)
1976年東京都生まれ。ライター、デザイナー、キャラクターコンサルタント。自衛隊勤務、テレビゲームのシナリオアシスタント、ディズニーキャストなどを経て現在に至る。戸越銀次郎・大崎一番太郎など「ゆるキャラ」のデザイン、プロデュースを行う傍ら、『週刊戦国武将データファイル』(デアゴスティーニ・ジャパン)、『信長とお江』(徳間書店)など歴史関連の記事・マンガ原作も執筆。著書『ワーキングプア死亡宣告』(共著)、絵本『しんかいくんとうみのおともだち』(イラストを担当)。

最終更新:2019/08/29 16:00
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