芸人をタダで見られるムショの慰問――元女囚が獄中で出会った印象深い芸能人
私の慰問の思い出といえば、まずは八代亜紀さんですね。最高にきれいでした。それと香水をたくさんつけてきてくれて、講堂中がめっちゃいい香りになりました。なんかデパートの化粧品売り場に来たみたいで、みんなでひそかに興奮したものです。騒ぐと叱られますからね。
Paix2(ペペ)もよかったですね。元懲役は、だいたい出てきてからもカラオケでけっこう歌ってるんですよ(笑)。
あとは、和歌山刑務所のトクメン(篤志面接委員)をされている桂文福さんの面談も印象に残っています。トクメンとは、ボランティアで懲役たちの悩みを聞いてあげたり、講話をしたりする方です。お坊さんや元教師、元刑事さんなんかが多いようですが、才賀さんもされているそうです。こういう方との面談は希望者が多いので、競争率が高いです。私もダメ元で応募したのですが、なぜか当選して、お話しさせてもらいました。
文福さんの第一印象は、「でかっ」の一言(笑)。170センチ、103キロだそうで、顔もカラダもとにかく大きな方でした。獄中では男の人を見る機会がまずないので、余計にそう思ったのかもしれません。いろんな話をして、「キミはそのままで最高や。変わらなくていいんやで」と言われました。
「えっ? こんなシャブで懲役のダメダメな私でも?」
「そうそう。キミは明るいし、大丈夫や。そのままでいいんや」
やっぱり、そういうふうに言われるとうれしいですよね。聞けば文福さんは吃音(どもり)にも悩んでいたそうで、明るくて楽しそうな噺家さんにも、実はいろんなことがあるんやなーと思いました。
こうして獄中でさまざまな出会いや経験があって、シャバに戻ってくるわけですが、住むところや仕事など「居場所」がなければまた逆戻りです。私は今のところは大丈夫なんで、このままがんばりたいと思っています。そして、いつかは私もトクメンになって、懲役の話をバリバリ聞ける人になりたいと本気で思っています。
中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」
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