コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験、「突然かつ非情」な偏差値暴落――「どうせ私はバカだから」娘の言葉に涙した母

2019/07/28 16:00
鳥居りんこ

 その後、由梨ちゃんは自室にバリケードを作り、舞子さんを部屋の中に入れようとしなくなったそうだ。当然、舞子さんはなだめようと試みる。しかし、由梨ちゃんはドアを開けようとする舞子さんに向かって、いろんなものを投げつけてきたそうだ。

「もう、私のことはほっといて!」
「どうせ、私はバカなんだから!」
「やってもやっても、バカだから、できないんだよ!」
「もう、こんなんじゃ、どこにも受かるわけないじゃん!」
「バカは死んだ方がいいんだよ!」

 ドアの奥から、愛娘の悲痛な叫びが聞こえてきたらしい。今までの由梨ちゃんの努力を知っているだけに、舞子さんのダメージも大きく、ドアの外側に座り込んで、泣いてしまったという。

「由梨にとって小学生最後の夏休みだったのに、結果として遊ぶこともさせず、ただただ叱咤激励してきた自分は母親失格ではないか? この道は間違っているのではないか?」そう思うと、舞子さんの目からは涙があふれ続けたそうだ。

 その時、同じく中学受験を経験している中3生の由梨ちゃんの兄・慎吾君(仮名)が帰宅し、自室に籠ってオイオイと泣いている妹と、そのドアの外でヨヨと泣き崩れている母親を目にする。

 事情を一瞬で察した慎吾君は、舞子さんに向かって「今は由梨をほっといてやれよ」と言い、由梨ちゃんの好物のドリアを作るように進言したという。

 そして、数時間後の真夜中、ベランダから由梨ちゃんの部屋の窓をノックして、

「由梨! 由梨! ジャコビニ流星群が見える!!」

と声を上げた。すると由梨ちゃんが窓を開け、ベランダに出てきたので、慎吾君は自分の双眼鏡を手渡したという。

「お兄ちゃん、見えないよ! 流星群、どこ?」

 慎吾君は「おかしいな、さっき、見えた気がしたんだけどな……。じゃ、もう見えないな、中に入ろう」と言いながら、背中越しに由梨ちゃんに、こう伝えたという。

「由梨、俺も小6の9月はどん底だった。心配すんな。でも、一度、底を見たら、もう上がるしかないから」

 そして、階下にいる舞子さんに向かって、「母さん、由梨がドリア食べるって!」と叫んだそうだ。最初は「言ってないし!」などと漏らした由梨ちゃんだが、慎吾君に笑いながら「腹減ってないの? じゃ、俺が食べちゃうよ」と言われると、気持ちが変わったらしく、「おなかすいた!」と、リビングまで降りて来たという。舞子さんは、由梨ちゃんが部屋から出てきたことがうれしく、思わず「お母さんもドリア、一緒に食べようっと」と乗っかると、同時に夫と慎吾君も「俺も食べる」と便乗。家族揃って、深夜の“ヘビー飯”になったという。

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