田代まさしさん「NHK出演」の意味とは? 元女囚が考える、覚醒剤中毒者の社会復帰
「『自分は依存症ではないから、いつでもやめられる』と思っていたのが間違いだった。だから、再逮捕されても全然やめられなかった」
番組でのマーシーの言葉です。これも「ポン中あるある」ですね。なんか「自分だけは違う」って思ってしまうんです。クスリに限らず、お酒や万引とかも同じでしょう。司会やゲストの人も、マーシーの話を聞いて、「今までは、クスリをやめられない人はダメ人間と思ってたけど、依存症は病気だから、批判するだけではダメなんですね」と、わかってくれたようでした。
ちなみに番組を見ていた編集者さんから、「テレビカメラの前で自分のことをすべて話すのは、相当しんどいでしょうね」と言われました。いやいや、むしろそのほうが気が楽になるんでしょう。ホンマのことですからね。私も自分から覚醒剤について話すことで、過去に向き合ってきました。
マーシーや清原和博さんがどんどんテレビに出て、本音でしゃべってくれたら、ポン中への理解も深まるし、社会復帰もしやすいのにと思います。レディー・ガガとか海外のロックスターたちも、過去のクスリ体験をオープンにしてますしね。日本も、そうなっていけばいいですね。
■居場所としてのダルク
番組ではマーシーが「ダルク」のスタッフとして働いているところも紹介されました。ダルク(DARC、Drug Addiction Rehabilitation Center)とは、自分も覚醒剤の使用歴のある近藤恒夫さんが1985年に作られた薬物依存者回復施設です。今は全国に組織があって、それぞれがピラミッド型ではなくヨコでつながっているそうです。
ダルクにも、「ミーティングの時にみんなでなんでも話す」というリハビリがあって、「私ならここまで言わんけど」的なことまで、なんでも話すのだそうです。そしたら、気持ちがすっきりするんですね。マーシーがダルクの仲間たちと、毎日「今日もクスリをやめられた」と話しながら真面目に生活している姿を見てもらうことは、家庭や仕事があるのと同じくらい大事やなと改めて気づきました。
世間の皆さんが温かい目で見てくれたら、更生も早いです。私もテレビや雑誌の取材を受けて、「こんな私を信じて話を聞いてくれる記者さんたちを裏切ったらアカンな」と思いましたからね。バッシングで、いいことは何もないです。
中野瑠美(なかの・るみ)
1972年大阪・堺市生まれ。特技は料理。趣味はジェットスキーとゴルフ。『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)や『新・情報7daysニュースキャスター』(TBS系)などへの出演でも注目を集める。経営するラウンジ「祭(まつり)」
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