カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「Domani」8・9月号

「Domani」登場の「世田谷ママ」はなぜキャラが薄い!? オシャレな街の知られざる凡庸さ

2019/07/19 15:00
島本有紀子
「Domani」2019年8・9月号(小学館)

 ワーキングマザー向けにリニューアルされた「Domani」(小学館)。最新の8・9月号の特集は「10日間で(頑張らずに)かっこいいママになる方法。」です。

 リニューアル後のキャッチフレーズは「脱ママ! 脱モテ! 脱真面目!」だったはずなのに、今回は「かっこいいママになる」……。「脱ママ」路線は完全になかったことにしたようです。この迷走っぷりは「かっこいい」とは真逆に感じますが、早速中身を見ていきましょう。

<トピックス>
◎高島彩の「ママ時間」「ノーママ時間」
◎「10日間で(頑張らずに)かっこいいママになる10の法則。」
◎実録!? 東京23区・働く母の生態ファイル「世田谷区の女」

高島彩、詩的に子育て武勇伝

 妙に味のある文章で読む人を惹き付ける、連載エッセイ「高島彩の『ママ時間』『ノーママ時間』」。連載のテーマ自体が「ママ時間」なので、当然と言えば当然ですが、今号でも“子育て武勇伝”が披露されています。

 まず冒頭では、このエッセイの原稿を書いている背景について、「右側の次女と左側の長女が二人して私の体に足を乗り上げてくるものだから、私の代わりに大きなプーさんのぬいぐるみを置いてそっとベッドを抜け出して、この原稿を書くことにしました。でもその前に、明日の朝ごはんの準備と、お弁当用の肉団子を作って、昆布を水につけて」……と、長々と説明。暗に「このような苦労の上で書いたエッセイなのだから、心して読め」と言われているようで、背筋が伸びますね。

 そのように人を引き込む術を持つ高島彩さん、さらに話は娘の乳児期まで遡ります。粉ミルクではなく母乳で育てたい「絶対的母乳信者だった」と回想し、「娘を薄暗い世界の中で抱きかかえ、カーテンの襞の数を1,2,3,4…右から左、そしてまた右へ。この時間が永遠に続くにちがいない。朦朧としながらどうしようもない不安に駆られたあの夜」「満足に母乳が出ないおっぱい。1時間近くかけて絞った、搾乳機の中にわずかに滴る母乳をこぼしてしまった時の絶望感。止まない泣き声に焦って手が震え、夜中の調乳で熱湯がかかって爛れた左手の甲」と、“頑張った自分”をやけに詩的に振り返ります(「襞」や「爛れた」という漢字を、高島さんは普段から使っているのだろうか)。

 その上で、昨年から日本でも発売開始された「液体ミルク」については、「まだまだ抵抗感の強いお母さんも多いかとは思う」とも書いています。

 子育て武勇伝を知りたい人もいるかもしれないけれど、液体ミルク派のお母さんがこれを読んだとき、「抵抗感のない私っておかしいのだろうか」と要らぬ罪悪感を抱いてしまうのではと心配になりました。

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