男性も生理用品を買うようになれば――ナプキンのパッケージが「ダサい」から脱却するためには?
――生理用品のパッケージデザインは、今後どう変わっていってほしいと感じますか。
渡部 「血」のイメージを払拭するものとしては、包帯や絆創膏のようなアプローチが正しいのではないかと思うのですが、あまり医療品の雰囲気を漂わせるのは、商品としてのアプローチ力が足りないかもしれません。というのも、医療品のイメージが強いと「使用感が悪い」と思われそうだからです。世界的なトレンドとして「肌にやさしい」などオーガニックの流れから、デザインは徐々に変わってくるのではないでしょうか。
ただ、日本でその傾向がはっきりと表れるには時間がかかるかもしれません。というのも、日本の女性はいまだに男性と比べ「働きにくい」環境にあり、「買い物をするのは女性」というイメージも根強い。そういった社会が根本的に変わり、「男性も女性用を含め家族のものを買う」といったことが一般的になれば、もっとニュートラルなデザインになるでしょうし、商品としてのアプローチも「かわいい」より、機能のわかりやすさを重視するようになると思います。実際、世界的に男性向けの尿もれパッドや成人用オムツは、かつて妻が夫のため、親のために買って用意するものでしたが、今では男性自ら買うものとするアプローチに変わってきています。
――消費者側の意識、そしてニーズが変わると、おのずとデザインも変わっていくということでしょうか。
渡部 イメージとしては、ティッシュのパッケージに近い。例えば、日本製紙クレシアの「スコッティ」。かつてティッシュといえば「装飾が施されている方が、高級感がある」とされ、今も「スコッティ」にはそういった商品があるのですが、現在は、値段やサイズ、また「肌にやさしいか」などでティッシュを選ぶ人が増えたので、白を基調にしたシンプルなパッケージのものも展開されています。また「スコッティ」は、基幹となっている5個セットの商品がブランドとして確立されていることから、さまざまな種類、デザインのものを展開できる面があると思います。生理用品も、各ブランドのベーシックな商品をしっかり確立させた上で、バリエーションを広げていくことが望ましいのではないでしょうか。今は、どれが基幹商品かわかりにくく、あまりにも種類が多すぎて選びにくいという面もあります。
女性は生理用ナプキンの使用が終了する頃、あるいは並行して、尿漏れパッドに移行する人も多く、その次にオムツと続く人もいるでしょう。一人暮らしの高齢者も多いので、自分でオムツを買うのに恥ずかしくないものがほしい。ただこれは生理と同様、パッケージデザインよりも社会的な認知が必要です。
――確かに、そもそも生理が恥ずかしいものとして捉えられている限り、どんなパッケージであっても恥ずかしさは続いてしまいますね。
渡部 親が娘に対して、初潮をどう説明するかは、日本に限らず各国でも難しいトピックのようです。そうした根本的なところが変わっていくといいですね。そういった意味でも、ユニ・チャームの「#NoBagForMe」はいいプロジェクトだと思います。こういったプロジェクトが一時的な話題作りではなく世間に浸透していくかどうかは、ユニ・チャームがしっかり広報し、ドラッグストアの店員さんから消費者まで理解を広めていくことが必要だと思います。
渡部千春(わたべ・ちはる)
東京造形大学准教授。デザインジャーナリスト。1969年新潟生まれ、93年東京造形大学卒業。世界の日用品、食品パッケージなどを研究。『これ、誰がデザインしたの?』『続・これ、誰がデザインしたの?』(美術出版社)、『北欧デザイン』(プチグラパブリッシング)、『北欧デザインを知る』(NHK生活人新書)など著書多数。
ブログ「これ、誰がデザインしたの?」