生理用品のパッケージデザインは「納得いかない」――美大准教授が語る“違和感”の正体
6月12日、生理用品ブランド「ソフィ」を販売しているユニ・チャームが、「生理用品を購入する時に紙袋や中身の見えないビニール袋などで生理用品を包む外袋に対して、“紙袋いりません”と言う選択肢をもつことを推進するプロジェクト」として、「#NoBagForMe」プロジェクトをスタート。「女性の体に自然に起こる生理について、『当たり前に語れる世の中であってほしい』との願いを込めて」「生理用品を隠す必要性を感じさせない」新しいパッケージのデザインを、20〜30代の美大出身女性や元アイドルらとともに開発するという。
ネット上では、この一報を受け「確かに生理用品のパッケージデザインはダサい」という声が散見されることとなり、また同プロジェクトにも携わるアパレル経営者で起業家のハヤカワ五味氏が、青山ブックセンターで生理用品のセレクトショップ「illuminate」を立ち上げるといった動きも出てきたが、デザインジャーナリストで東京造形大学准教授の渡部千春氏も、自身のブログ「これ、誰がデザインしたの?」において、以前から「生理用ナプキンのパッケージデザインについて、どうも納得がいかないところが多い」と、疑問を投げかけ考察を行っていた一人。今回、そんな渡部氏に、生理用品のパッケージデザインの問題点について話を聞いた。
花柄やピンクは「痛みを和らげる」ため?
――生理用品のパッケージデザインについて、「納得がいかない」と感じる点を具体的に教えてください。
渡部千春氏(以下、渡部) 「20〜30代」をターゲットにしているように思えてならない点です。ユーザーは12歳くらいから50歳くらいまでの幅広い層のはずなのに、「花柄」「蝶柄」「レース柄」「パステルカラー」など、中高生や中年女性が持つには違和感があるものが多い。もっとユーザー個々の指向性に合わせるのであれば、例えば中高校生くらいだとキャラクターものが好きな子もいるでしょうし、一方で中年層は、娘がいるかいないか、で分かれるかもしれません。母親は自己主張よりも娘を中心に生活用品を合わせようとする傾向が見受けられます。とはいえ、そうでないケースも非常に多い。子どものいない中高年、家族と一緒に住んでいない、あるいはシングルの女性などにもう少し意識を寄せれば、パッケージの好みはばらけてくるはずなのですが、現状、日本のマーケティングというのは生理用品に限らず、消費力の高い「20〜30代」の「女性」を中心に捉えがちですね。
今ある生理用品のような「押しの強い色や柄」のパッケージで消費者を掴む傾向になったのは90年代後半くらいから。ここ20年ほどは変わっていないようです。それより以前は「生理は隠すもの」という認識が今よりも強く、何の表情もないようなパッケージでした。
――「花柄」や「パステルカラー」などのパッケージについて、ユニ・チャームは、「そうしたパッケージには『痛みを和らげる』ような優しいイメージもあり、実際に高い評価を受けてきた側面もある」(6月12日付け「ハフポスト日本版」)とコメントしています。
渡部 日本や海外の医薬品のパッケージデザイン集を見ると、日本に比べて海外は「パッケージで痛みを和らげよう」という意識はあまり感じられません。日本はそういう傾向が強いのかもしれませんね。
なお、韓国の「ソフィ ボディーフィット 貴愛娘(ギエラン)」は、痛みを和らげるとされるよもぎ成分を配合している製品ですが、花柄やピンクではなく“漢方”のイメージを打ち出したパッケージになっています。
――そもそも痛みを和らげるイメージがパッケージに必要なのかどうかも疑問です。
渡部 実際に色彩学的には、パステルカラーなどの柔らかい色、緑系の色などは、人の心を穏やかにさせるといった働きはあると言われています。とはいえ、メーカーは消費者のアンケート結果に大きく左右されているのではないでしょうか。また、質問の仕方もやや誘導式なのではないかとも考えられます。例えば、花柄やパステルカラーのパッケージに関して、「このパッケージデザインは痛みを和らげると思うか」という質問を女性に投げかけ、「非常にそう思う」「そう思う」「あまりそう思わない」「まったく思わない」からどれかを選択させるというアンケートを実施した場合、恐らく「そう思う」にチェックする人が多いと思います。しかし「和らげないと思うか」という質問だと結果は違ってくるはず。アンケートでは後者のような聞き方は少ないと思います。