コラム
“中学受験”に見る親と子の姿
父が息子を「刺殺」という最悪の結末も――中学受験で「子どもの人生を乗っ取る」親の愚かさ
2019/07/14 16:00
一方で、筆者はリエさんに、もっと強くなることと精神的・経済的自立を助言した。そんなこんなで3カ月ほどがたった頃、これはたまたまなのだが、茂さんに辞令が下りて海外赴任をすることになったのだ。リエさんは頑なに同行を拒否。こうして、晴れて、リエさんは克己君と弟の3人暮らしになった。
リエさんは今まで、茂さんからの暴力を結果的に止められなかった非を心から克己君に詫びたそうだ。そして、「克己、ママはこれから強くなって、どんなことがあっても克己を守る。約束する。でも、克己の人生は自分のものなのだから、自分の好きなように生きなさい」とも伝え、受験をやめるように提案したという。
しかし、克己君の答えはこうだった。
「このままやめたら、アイツ(茂さん)に殴られ損だろう?」
克己君はそれから、なぜかスイッチが入ったが如く勉強に取り組みだし、結果、見事にS学園の特待生として合格した。将来の夢は、克己君を救ってくれた塾の先生のようになることだそうだ。
リエさんは、もともと持っていた資格を生かして、再就職。さらにステップアップするために勉強中である。現在も海外にいる茂さんとは将来的には離婚するという意志を固めている。
中学受験は親主導の受験ではあるが、やるのは子どもだ。自分の人生の1ページをどう描くのかは子ども自身が決めていくということは、中学受験も変わらない。親の役割は「安心安全な環境」での「見守り」だけだ。これが途切れた時に、中学受験は「家庭崩壊」を簡単に招いてしまうものであることだけは、お伝えしておきたい。
(鳥居りんこ)
最終更新:2019/08/14 18:15