コラム
“中学受験”に見る親と子の姿
父が息子を「刺殺」という最悪の結末も――中学受験で「子どもの人生を乗っ取る」親の愚かさ
2019/07/14 16:00
以前、小学校5年生の克己君(仮名)の母親・リエさん(仮名)から、「夫が息子の勉強をみるにあたって、殴る蹴るの暴力を振るっている。どうすればいいだろうか?」という相談が筆者の元に入った。 聞けば、夫の茂さん(仮名)は高学歴であり、一流企業で働いているものの、仕事的にはうまくいっていない状況だという。
「夫はまるで、仕事でうまくいかないというストレスを息子にぶつけているかのようです。息子がため息をついただけでもビンタをしていますし、教えたところを間違えようものなら、もう……」
リエさんは、「夫にとっては、私も克己も“所有物”でしかない」と感じていたそうだ。解決策として、筆者はまず離婚か別居を勧めたが、経済力がないという理由で二の足を踏んでいるということだった。であれば、とりあえずの手段として、父能研(父親が受験指導するという意味のスラッグ)を止めて、指導力が高い個別塾に、克己君を“緊急避難”させるように伝えた。塾に行っている時間を引き延ばすことで、父親との物理的接触を減らそうとしたのだ。
そして同時に、塾の老練な先生に、茂さんを指導してもらうようにした。茂さんのようなタイプは、今の中学受験の実態並びに傾向と対策を論理的に筋道立てて教えられると、意外にもプロの言いなりになる場合がある。
茂さんは見事にそれにハマってくれたのだ。その塾の先生は「茂さんの気持ちは解る」と共感した上で「古来より、優れた子にするためには、他人を師と仰ぐ方が効果的」という話をし、「お子さんを私に預けなさい」「預けたからには口出し無用」と説得したようだ。