カルチャー
インタビュー対談【前編】

ギャルもサブカルも“田舎”へ吸収される――山内マリコ×笹井都和古対談「地方出身女の生き方」

2019/07/12 18:00
番田アミ

――自分がいる“地元”と”東京”の違いを意識し始めたのはいつ頃でしたか? やはりネットの影響が大きいのでしょうか。

笹井 山寺宏一さん司会の『おはスタ』(テレビ東京系)を見ていたときですね。放送が終わると、出演者の女の子たちが、「行ってきまーす!」と言って学校に行くのを見て、「東京って感じ!」と思いました。「東京だと、テレビ出演してから学校へ行けるんだ」みたいな。あとは、夏休みに見る『笑っていいとも!』(フジテレビ系)ですね。「“アルタ前”って何!?」という驚きがありました。

山内 やっぱりテレビで気づきますよね。富山はそもそもテレビのチャンネル数が少なくて、『ドラえもん』が日テレ系で放送されてるんです。テレ朝の顔なのに(笑)。大阪に行ってから「あれ? もしかして……?」と気づきました。あとは雑誌の存在がすごく大きかった。好奇心を満たしてくれるものは雑誌しかなかったですね。地元で普通に楽しく生きてるし、まったく過不足なく便利な生活なんだけど、雑誌をめくると、この世界がすべてではないことが載ってて、むしろここはマイナーなんだと突きつけられる。

 でもそんなマイナーな地方都市こそが、日本の国土の9割を占めてるんだってことを明かしたのが、ネットなんじゃないかな。私は大阪、京都、東京といろんな都市に移り住む中で、地方が特殊な生活圏なんだと気づいたのですが、その気づきを唯一共有できたのがネットだったんです。「田舎=稲が青々として茅葺き屋根がある里山的な桃源郷のイメージだけど、現実はこうだからな」と、チェーン店の看板が並ぶ国道沿いの写真がアップされていて。デビュー作の執筆中にまとめサイト的なやつでそれを見て、自分の現状認識は間違ってないんだと確信を深めていきました。街ってあまりにも当たり前にあるから、住んでる人たちは相対化しづらい。差異に気づくのは、ほかの街を知ってて比較ができる、“越境経験者”なんですよね。

――そうした違和感を感じなかった人が、地元で生き続けるんでしょうか。

山内 上京してきた人は、地元で普通に幸せに生きてる人を不思議がるけど、こっちが“異端”なんだと思います。自分にとっての“普通”は、県外に出て、そこから好きな仕事に就くことだったけど、少なくともクラスの半数は、18歳の時点で地元を選んでいるし、Uターンも多い。うちは兄が地元派ですが、本当に真逆のタイプ。同じDNAで同じ環境で育ったのに、なぜこんなに志向が違うのか、こればかりは本当にわかりませんよね。

笹井 私は、学生時代の文化的意識の違いかなと思ったこともありましたが、そうでもないですよね。学生時代にサブカル系だった子も、地元にとどまったりするし。

山内 これは我々の永遠のテーマですね。ずっと考えて書き続けるしかないです。ただ確実に言えるのは、こっちが傍流なんだってこと。

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