コラム
[連載]ヤリチン卒業!! 叶井俊太郎の子育て奮闘記

『アメリ』以来の手ごたえ! パリ人肉事件の加害者を追った映画『カニバ』を手掛けることになった一部始終

2019/07/01 19:00
叶井俊太郎

 早速、買い付けに動こうと思いきや、当時所属していた配給会社からは許可が下りず……。他の配給会社にお願いしても、「何か問題が起こったら責任が取れない」と言われて断念。唯一、某配給会社が「一緒にやろう」と言ってくれたので期待していたら、そこも「DVDレンタルが見込めないからNG」とのこと……。結局、20社ほどにお願いしたけど、すべて断られてしまった! そこまで断られると、オレも「これはもう日本公開は完全に無理か……」とあきらめていました。

 そんな時にサイゾーが運営してる、超常現象や都市伝説を扱うニュースサイト「TOCANA」の編集長と会うことに。たまたま『カニバ』の話題になった時に、「それ、うちがやりますよ!」と言ってくれたわけなんです。マジで決断力あるよな! 後日、サイゾーの社長とTOCANA編集長と意思確認して、買い付けることになったわけ。

 ちなみに『カニバ』はフランス映画。2015年にフランス・アメリカの撮影クルーが来日し、佐川氏とその実弟に1カ月間密着し、人肉事件の話から、弟さんの驚きの性癖告白などを収めている、全編衝撃の連続です。邦題は『カニバ/パリ人肉事件38年目の真実』に決定! 「38年目の真実」とは弟さんのことでもあるんですが、そこらへんはぜひ劇場で見てください。

 オレは「TOCANA編集部 配給宣伝担当」の名刺を作ってもらい、劇場営業をやることに。運良く、ヒューマントラストシネマ渋谷の担当が『カニバ』を見てくれていて、すぐに「上映OK!」と言ってくれたのは助かりました。その後も全国の劇場に連絡し、なんとか10館以上の上映は決定。でも20館ほどは「東京の客の入りを見てから判断したい」と言っています。確かに「見たい/見たくない」がここまでハッキリ分かれる作品は珍しいですね。

 それにしても、たった1人で劇場の営業と宣伝をこなすのは、30年近く映画の仕事してるオレでも初めて。アシスタントは絶対必要だと思ってたが、意外にもオレ1人でどうにか回ってます。宣伝の細かいところは、TOCANA編集部のスタッフたちも協力してくれてますし、編集長も手伝ってくれているからね。配給会社にいた時は小さい規模の映画でもスタッフ3~4人でやっていましたが、1人でも配給の仕事ができると実証できたのはオレとしても驚きました。宣伝も外注してないし、人件費を相当削ることができたんです。

 ちなみに『カニバ』は劇場公開と同時に、ネット配信も決まりました。7月12日の劇場初日には、渋谷ロフト9でのニコニコ動画オフィシャル生放送でトークライブも決まり、映画出演者の取材も終え、マスコミ試写は2回しかやらなかったけど、2回とも満席で10人くらいは入れずに帰ってしまったほど。試写に入れなくて帰るなんて、オレが関わった範囲だと映画『アメリ』(2001)ぶりだよ! これはもしかして『カニバ』は社会現象になるほどヒットするかも?

 そんなわけで連日『カニバ』をメインに仕事しているのですが、自宅に置いていた『カニバ』のチラシを小学4年生の娘ココが見つけて、「なに、この『人肉』って?」と聞いてきました。「人間の肉を食べてしまった男がいて、その人の映画だよ」「えー? 人間が人間を食べた? キモイ映画! 最悪だね! もっと友達に自慢できるような映画をやってよ」!

 な、なるほど……。確かに人肉映画の仕事をしているなんて、友達に言えないよな。でもTOCANA配給第2弾の映画もすでに買い付けたんですが、これもまたココが友達に言えないような映画なんだよな。ココも、ホラー映画を「キモイ」じゃなく「笑える!」と言える感覚に育つといいんだけどな~。

映画カニバ

最終更新:2019/07/01 19:00
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