カラテカ・入江慎也、「闇営業で吉本解雇」に考える「人脈」なるものの脆弱さ
しかし入江は今月、「フライデー」(講談社)に、事務所である吉本興業を通さずに仲介した営業、いわゆる闇営業の相手が大規模詐欺グループであったことを報じられた。雨上がり決死隊・宮迫博之やロンドンブーツ1号2号・田村亮などの人気芸人も参加していたそうだ。入江をはじめとして全員が「反社会的集団とは知らなかった」「ギャラはもらっていない」と説明し、入江は吉本興業を解雇、宮迫らは当初は厳重注意という処分を下されていた。しかし、その後、金銭の授受があったと認められ、宮迫らも、当面の間謹慎することになった。
芸人としての活動はできなくなっても、副業としての「イリエコネクション」があるから、大丈夫。そう考える人もいるだろう。しかし、「イリエコネクション」に価値があるのは、入江が吉本興業に所属している現役の芸人の場合ではないだろうか。ビジネスの基本は信用だが、「イリエコネクション」に仕事を頼む人は、入江が知名度のある芸人であることを信用の担保にする人もいるだろう。加えて吉本興業という大きな組織に属しているのであれば、トラブルがあったときに、そこに駆け込むこともできる。
また、お笑いの世界は、先輩を立てるのが鉄則だというので、入江を助ける後輩が出てくるのではと思う人もいるかもしれない。が、その論理が生きるのは、先輩後輩双方が現役の時ではないだろうか。それに、先輩を常に立てるというお笑いの世界の掟から言うと、今回の騒動は「入江が相手先の素性も確かめずに、先輩に迷惑をかけた。ヘタしたら、先輩の芸人生命にかかわる事件を起こした」とみることもできるだろう。そんなトラブルメーカー入江と現役の芸人が交流を持つかと言われると、首をかしげざるを得ない。
結局、人脈をビジネスにつなげるために必要不可欠なこととは、大企業など信用されている機関に所属し、自分もそれなりに結果を出す、つまり実力があることではないだろうか。人脈があるから成功したのではなく、それなりに成功すると人脈がついてくる、ということだと思う。「知り合い」や「友達」だからおいしい仕事が回ってくるほど、ビジネスの世界は甘くない。
冒頭で触れた「人脈は金で買えない」発言の村上は、ポスト中居正広とも言われるMC力で、今、伸び盛りだろう。ここまでの地位を築けたのはもちろん自分の実力だが、大前提として、ジャニーズ事務所所属であることが“信用”を与えてくれていることは、疑う余地はないのではないか。
つまり、どんなに人脈を築いたとしても、入江のように解雇になっては元も子もない。かつて興行は反社会的勢力が取り仕切ることが多く、ゆえに芸能界とはずぶずぶな関係であった。しかし、時代は変わり、コンプラインス的にそれが許されなくなっている。週刊誌の記者でなくても、スマホさえあれば、証拠の音声や画像が録れて拡散できる時代であるため、自分にとって不都合な話をもみ消すことはできない。
安全第一。人脈を広げることより、工事現場でよく見るあの標語を、芸能人のみなさんは今一度かみ締めた方がいいのかもしれない。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。