コラム
【連載】ホス狂いのオンナたち
ホストで「一晩1000万円」使った女――担当も驚いた「紙袋に詰まった万札」の出所とは?
2019/05/31 19:30
しかし、1年後くらいだろうか。ユイさんのことも忘れかけていた頃、彼女の担当ホストと話す機会があった。
「ユイはすごかったよ」
ホストはユイさんのことをよく覚えていた。まるで、抗争の凶弾に倒れた伝説のヤクザについて語る、下町の老人のような口調であった。
ここから先は、そんな老人――もとい、ホストから聞いた話だ。ユイさんは普段から、毎月200万円以上を使う正真正銘の「エース」だった。しかもツケはせず、毎回ニコニコ現金払いの超優良顧客である。
ユイさんが結婚していることも彼は知っていた。しかも、相手は指名していた元ホストだと言うから驚きである。担当ホストと結婚する――それは、ホス狂いとしてのゴールと思われがちだが、それでもユイさんは満たされなかった。その後の隠しダンジョンが、ユイさんを待ち受けていたのであろう。もちろん、その「隠しダンジョン」とは、若く、新しいホストのことである。
ユイさんがどうやってお金を作ってくるのか。担当ホストは、それを知らなかったし、聞こうともしなかった。いや、聞いてはいけないような気がしていたという。このとき、金策の方法を問いただしていたら、二人の関係は終わっていたかもしれない。踏み込まないという信頼関係の形も、この世界には存在しているように思うのだ。
「土地を売って数千万つくれそうだ」
彼女がそう嬉々として語っていたときも、彼は特別な反応はしなかったそうだ。「目の前にないお金に興味はない」と言っていたが、カッコつけていただけかもしれない。私がもしホストだったら、数千万と聞けば、狸の皮算用を始めてしまう。それがたとえ、話半分にしか過ぎない言葉だったとしても。