『ザ・ノンフィクション』「日本には住めない」56歳男と「帰国できない」68歳男「黄昏れてフィリピン~借金から逃れた脱出老人~」
NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月26日放送のテーマは「黄昏れてフィリピン ~借金から逃れた脱出老人」。フィリピンクラブに入れ上げ借金を作りフィリピンへ「逃亡」した2人の日本人男性のその後を追う。
あらすじ:フィリピンで家族を持った56歳と、家もなく帰国すらできない68歳
フィリピンクラブで借金を作り、フィリピンに逃げた二人の日本人。56歳のマナブは、フィリピン人の内縁の妻(25歳)と暮らし一児をもうける。しかし生活はギリギリで、妻が住み込みのメイド職に就いたため、家族と暮らせる時間は少ない。一方、68歳のサダオは家も持たず、自動車工場の呼び込みの仕事で、その日暮らしを続ける。雇用主の助言から、帰国を目標に日本大使館へ掛け合ったところ、帰りの航空券(約6万円)を用意できれば、パスポート失効後の不法滞在分の罰金は不問にすると言われる。一時は、上野公園の桜の話をするなど、帰国への希望を見せたサダオだが、金銭負担のめどが立たず、断念してしまう。
陽キャなマナブと陰キャなサダオを分けるもの
今回二人の日本人が出てくる。マナブ(56)とサダオ(68)。フィリピンクラブで身を持ち崩し、借金地獄から逃れるためにフィリピンへ移り住んだ経緯は共通しているが、二人の雰囲気はまったく異なる。明るい「陽キャ(陽気なキャラクター)」がマナブ。暗い「陰キャ(陰気なキャラクター)」がサダオだ。
陽キャのマナブは25歳の可愛い内縁の妻・ロナがおり、その間には6歳の男の子がいる。子どもの誕生日はデコレーションケーキを買い、近所の人を呼んでカラオケパーティーをするなど、地元社会にも溶け込んでいる。タガログ語を3カ月でマスターしたという自作のノートは見やすく細やかで、熱意が伝わってくる。
一方、陰キャなサダオは家も持たず、仕事は自動車工場での呼び込みだ。近隣住民からは、いつ日本に帰るのかとヤジられ、うっすら馬鹿にされている。工場を営むエドガーさんの厚意でなんとか生活できている状態で、唯一の楽しみは猫に餌をやることだ。
マナブとサダオの境遇を分けたのは、もともとの性格が一番大きいだろうが、「言語能力」もあるように感じた。息子の誕生パーティーのカラオケでタガログ語の歌を熱唱したマナブと違い、サダオはタガログ語に堪能ではないように見えた。
大人になってからの外国語習得は泣けるほどの努力が求められる。マナブはロナとの交際でタガログ語習得に火がついたようだ。「人を好きになる」ことも年をとるほど面倒になるものだが、「外国語を覚える」ことといい、しみじみとマナブはと人生を捨てていないエネルギーにあふれ、諦めきっているサダオにはないパッションがある。