「マジ、ウケるんだけどー」万引きGメンが四国出張で遭遇した、“2人の少女”への複雑な思い
犯行は素直に認めてくれたものの、反省した様子のない2人は、事務所に向かう途中、万引きGメンに捕まったと、妙なテンションで盛り上がっていました。
「ウチも、万引きGメンやってみたいんですけど、どうやったらなれますか?」
「前科があったらなれないの。あなたは、大丈夫かしら?」
「そりゃ、だめだあ。キャハハハ……」
捕まったことを楽しんでいるかのような2人の振る舞いに困惑しながら事務所に入り、ナイロンバッグに隠した商品を出させると、どことなくmisonoさんに似ている少女のバッグからは25点(3万4,000円相当)の商品が、どことなく若い頃のハイヒールモモコさんに似た少女のバッグからは18点(2万8,000円相当)の商品が出てきました。一番高額なのは、美顔ローラー(3,980円・税別)で、2人とも同じものを盗んでいます。
「こういうこと、いつもしてるの?」
「まあ、ぶっちゃっけ金ないし、ここは楽勝なんで」
「このアルミホイルは、なんのために?」
「ゲートが鳴らなくなるって、ネットの掲示板でみたから……」
misonoさん似の少女が、あっけらかんと、どこか勝ち誇ったように言いました。どうやら彼女の方がリーダー格のようで、モモコさん似の方の少女は、ただうなずいて同調しています。所持金を聞けば、2人共に3,000円程度しか持っておらず、商品を買い取ることはできません。身分を証明できるものはないというので、メモ用紙に人定事項を書いてもらうと、2 人とも16歳で、この店の近所におばあちゃんと2人で暮らしていると話しました。
「おばあちゃん、迎えに来てくれるかな?」
「前に捕まった時、これが最後って言っていたから、多分来てくれない」
「お父さん、お母さんは?」
「……いない。たぶん死んでる」
幼馴染だという2人は、同じような境遇に育ったらしく、中学を卒業してからは、地元のスナックで一緒にバイトしているそうです。これ以上、彼女たちの生い立ちを知ってしまえば、情に流されてしまう。そんな気がして、逃げるように席を離れた私は、内線電話で店長を呼び出します。
連絡を受けて駆けつけた店長は、被害品の多さに呆れ、未成年者であることを考慮しても許せないと警察を呼びました。まもなくして現場に臨場した少年課の女刑事が、被疑者2人の所持品検査を終えたところで、misono似の少女が言います。
「今日は、夕方からバイトがあるんですけど、何時に帰れますか?」
「当たり前だけど、今日のバイトは行けないね。あんたたち、保護観中だよね? もしかしたら、しばらく帰れないかもしれないよ」
「マジかあ……」
ようやくに自分の立場を悟ったらしい2人は、テーブルの下で手を握り合って俯き、すすり泣き始めました。すると、その姿を見た女刑事が、2人に向かって言います。
「あんたたち、乳首見えているわよ。背筋を伸ばしていなさい」
その瞬間、店長の視線が彼女たちの胸元に走ったのを現認した私は、この人も捕まえた方がいいと言いたい気持ちになりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)