コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

第一志望校を横取りされる――! 中学受験生の母が語る、「娘の友達」への黒い感情と後悔

2019/05/25 19:00
鳥居りんこ

 そんな折、仕事帰りに駅で塾帰りの萌ちゃんと待ち合わせをしていた典子さんは、ある光景を目撃する。「仲良し4人グループ」のはずなのに、明らかに萌ちゃんだけが仲間外れにされているような形で歩いていたのだ。

「やっぱり萌は、いじめられている……!?」

 そう直感した典子さんは、萌ちゃんをピックアップした後に、「萌、久々に女子会しよう!」と、まだ開いているカフェに連れ出したという。

 そこで典子さんは、問わず語りに、萌ちゃんに話をしたそうだ。

「ママが悪かった。ひどい言葉を言ったこと、本当にごめんなさい。萌はずっと我慢していて偉かったし、そんな優しい萌はママの自慢だから。いろいろ言ってしまったけど、ママは葵ちゃんより上の点数を取ること以上に、萌に笑顔でいてほしいと思ってるの。それに、女の子同士の友情っていうのは難しいものだから、嫌な人と無理に付き合う必要はない。もし嫌だったら、志望校の変更もまったく構わないよ。今、萌が頑張っているのは、楽しい中学生活を過ごすため。中学受験をやり続けるならば、何をすべきかをよく考えてみることが大事だと思うよ」

 そして、最後に「文房具くらい、いくらでも買ってやるから、そんなに欲しけりゃくれてやれ!」と言い放ったという。萌ちゃんはこの言葉に笑いだし、久しぶりのケーキセットを頬張りながら、典子さんに向かって「ママ、ありがとう。なんか元気出た!」と言ってくれたそうだ。

 それから、典子さんは塾に出向き「こういう状況なので、よく見てやってほしい」と要望を出し、塾の帰りは必ず、入り口のところまで迎えに行くようにしたという。そして、星空を眺めながら“女同士”の会話をし、歩いて自宅まで帰ることにしたそうだ。

「あの時、萌に『受験をやめてもいいし、転塾も悪くない選択。でも、それを決めるのは萌だよ』って言ったんです。そしたら、萌が出した結論は『受験はやめないし、転塾もしない。このまま、この塾で頑張る』というものでした。おとなしくて、自分の意見も言えないようなタイプの萌は、実はすごく思慮深くて、芯があるってことを実感しましたね」

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