第一志望校を横取りされる――! 中学受験生の母が語る、「娘の友達」への黒い感情と後悔
“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。
“受験”というものは時に残酷である。“定員”が存在するからだ。特に中学受験は“フェアな受験”と呼ばれている。総得点が高い者順に合格通知が届けられる、一発勝負の仕組みなのである。つまり、定員がある以上、塾で同じクラス、模試でも同じくらいの偏差値、しかも志望校も一緒という仲良しの友達同士であったとしても、本番で明暗を分けてしまうことは稀ではない。
そういう現実があるせいか、親の方がナーバスになり、“隣にいる仲良しのお友達”より、1点でも高い点数を獲得することを、我が子に厳命してしまうケースが後を絶たないのだ。
ある塾に萌ちゃん(仮名)という優しくおっとりした性格の女の子がいた。1年生から塾に入り、新4年生になるタイミングでその塾の中学受験コースに移行したのだ。成績も優秀で、目指す難関U学園も「このまま努力し続ければ、十分、合格圏内」という位置に付け、5年生の秋を迎えていたという。
そんな中、塾の同じクラスに葵ちゃん(仮名)という女の子が転入してきた。彼女は帰国生で、明るく活発、しかも華やかなタイプだったためか、すぐさま塾のクラスでも人気者になっていったという。葵ちゃん、萌ちゃんも含めた“4人組仲良しグループ”が結成され、お弁当を食べるのも、トイレに行くのも、駅まで帰るのも、一緒に行動するようになっていったそうだ。
そうこうしているうちに最終学年を迎え、「志望校調査」が行われる季節になった。仲良し4人組は、自分がどの学校を志望しているのかを、素直に言い合ったそうだ。葵ちゃんは萌ちゃんに影響されたのか、当初は帰国枠を持った別の学校を第1志望校に据えていたのだが、徐々にU学園の虜になり、帰国枠を設定していないU学園を第1志望校にしたという。