『ザ・ノンフィクション』26歳のラウンジママ・沙世子に感じる“爽やか”さ「歌舞伎町で生きる~その後の沙世子~」
アルコール依存症になってしまったマリの母親は、もともと女手一つで二人の子どもを育てるバリバリの「働く女」だった。マリの母が口にした、「お母さんも(自分が)依存になんてならんと思っていた。責任感が強い人や頑張りやすい人や、やらんといけんという人ほど(依存に)陥る」という言葉が重い。
頑張ろうとする真面目さはいいことのように思えるが、時に本人を意識的、無意識的に追い詰めていってしまうこともあるのだろう。しかし、なまじバリバリできるタイプほど、バリバリできなくなると自分の根幹が揺らぐような不安を覚えるのではないだろうか。しかし、バリバリ働くのが好きな人に「折れてしまったら大変だからほどほどに行け」というのは、ぐうたらな人にもっと頑張れというのと同様で、受け入れてもらいにくいだろう。「無理のない頑張りを続ける」ことの難しさを思う。
娘のマリも「結果がお金で現れるからこの仕事は楽しい」と話すバリバリ派だ。マリは気が強そうに見えて指導を求めるタイプであり、そういったことをしない沙世子のスタンスに、当初もどかしさを感じているように見えた。しかし、沙世子がインフルエンザで不在時には巨乳を生かした新しい名刺を作るなど試行錯誤し、もどかしさを自力で打開する。これも沙世子が、「いっぱい話しますか」とマリをサシ飲みに誘ったりと手をかけていたことが効いたように思える。仕事で追い詰められそうなとき、話を聞いてくれる上司の存在は大きい。
沙世子のキャストに対する包容力は26歳にしては並外れており、凄まじいマネジメント力だ。沙世子の「頑張り」に無理がないことを願うが、番組を見る限り、メンタル面で揺らぐ心配は今のところなさそうに見える。
一方で、心配なのはフィジカル面だ。「LP TOKYO」は酒が飲めないキャストが多く、その代わりに沙世子が客の入れた酒を飲むことが多い。そのため「毎日顔が違うといわれる」と話すほど酒むくみがひどく、60分の番組内でも日が変わるたびに顔の大きさが違っていた。体が悲鳴を上げているのだ。フィジカルで調子を崩せば、それはメンタルの崩れにもつながりやすい。「LP TOKYO」は評価制の導入よりも、客のボトルをすぐ空にしてもケロッとしている“強肝臓ヘルプ”のスカウトが先決な気もする。
次回の『ザ・ノンフィクション』は「男と女の婚活クルーズ 2019」。番組ホームページを見ると「主人公はあや38歳 再婚したいのにある理由で男に去られ…」とあり、今から楽しみだ。やはり、この番組は主役がO(Over)-35だとよりギラギラと輝く。
石徹白未亜(いとしろ・みあ)
ライター。専門分野はネット依存、同人文化(二次創作)。著書に『節ネット、はじめました。』(CCCメディアハウス)。
HP:いとしろ堂