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『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』42歳ホスト・伯爵、売り上げランキングに返り咲くまで――「もう一度、輝きたくて」

2019/05/07 17:41
石徹白未亜
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

 NHKの金曜夜の人気ドキュメント番組『ドキュメント72時間』に対し、こちらも根強いファンを持つフジテレビ日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』。5月5日放送のテーマは「もう一度、輝きたくて」。42歳のホスト・伯爵が、売り上げランキングに返り咲くための奮闘の日々を追ったものだ。

あらすじ:42歳、崖っぷちホストが起死回生の一手に選んだ「TikTok」

 今回の主人公は歌舞伎町のホストクラブ「ROMEO」で働く42歳ホスト、伯爵だ。番組は、特定の場所や人物を定期的に追い続けており、ROMEOや伯爵もその「定点観測」の対象になっている。ROMEOが舞台の回では、ほぼ毎度登場するイケメン社長・ナイトの姿も確認でき、元気でいたのだとうれしくなった。ナイトのように「会ったことがないのになじみ」な人たちができるのも、『ザ・ノンフィクション』の醍醐味だ。

 10年前の2009年、伯爵は一世を風靡したホストだった。しかし、客層が20~30代前半の女性で占められるホストクラブにおいて、現在の伯爵は客からも疎んじられている。月給は5万円まで落ち、平成生まれの後輩ホストに濃い酒を無理やり飲ますなど「昭和ホストの体育界系の洗礼」も反発を呼ぶなど、破れかぶれの日々が続く。

 伯爵の絶頂期を知るナイトからは経営に移ってみてはと諭されるが、売り上げランキングに返り咲いたら飲もう、と誓いつつ急逝した友のためにも、伯爵は現場にこだわり続ける。後輩に教えを請い、その中で起死回生の一手として伯爵が選んだのはSNS。ショート動画投稿アプリ「TikTok」を使いこなし集客につなげている後輩売れっ子ホスト、しゅんPのアシストもあり、月間売り上げナンバー4へと返り咲く。

女性客に「ホストとしてヤバい」とやり込められる

 伯爵は、ホストなのに会話がヘタだ。たとえるなら、大学の飲みサークルで自分は“ウェイウェイ系”だと本人だけが思っているような感じで、これは男子大学生がやっていても痛々しいのに、42歳でやられるとただひたすらに厳しい。女性客に「(伯爵といても)発散できる気がしない」とキツイ言葉を浴びせられ、さらに「言い返せないなんてホストとしてヤバい」とまでやり込められるが、大金を払っているのに、このノリをやられ自分のボトルの酒を飲まれれば、腹が立つ気持ちもなんとなくわかる。

 一方、昨年、歌舞伎町の超有名ホストクラブ・愛本店の、売れっ子ホスト・壱氏を取材したことがある。壱氏は取材中思わず頬が緩んでしまうようなイケメンだったのだが、その美しい顔やスタイルよりも驚いたのが「聞き上手」ぶりだった。インタビューの仕事で来ているのに、話していてこちらが楽しくなってしまうという壮絶スキル。相手に気持ちよく話をさせることで魅了させる。これが一流ホストの技なのかと感銘を受けた。

 容貌はやはり加齢で衰えてしまう。伯爵は今42歳だが、35歳くらいでトークスキルを鍛えねばこの先マズいと、危機感を抱かなかったのだろうかと思う。しかし一方で、伯爵のこのあまりあれこれ戦略を考えない天真爛漫さが、10年前の、ナイトも憧れた一時代を築いた伯爵の魅力だったのかもしれない。

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