カルチャー
インタビュー【前編】

『おっさんずラブ』BLブームはまやかし!? BL映画界のパイオニア語る“ヒット”のウラ側

2019/05/10 21:00
番田アミ

――公開規模の大小以外にも、ネックになることがあるのでしょうか。

三木 『おっさんずラブ』見てましたか? 僕は面白く見てましたけど、吉田鋼太郎さん演じる“部長”のキャラクターがバラエティ要素を含んでいたことで、あそこまで多くの人に受け入れられ、人気が出たと思うんです。「こうすればテレビでもBLできるのか」と得心しましたね。しかし、男性同士の恋愛をバラエティ要素ナシで、“王道”の恋愛ドラマにしようとすると、どこもやりたがらないという……。

 実は『タクミくんシリーズ』のドラマ化を、以前某局に提案したんです。『タクミくんシリーズ』をご存知の方はわかると思いますが、『おっさんずラブ』とはちょっと方向が違って、“ド王道”の学園恋愛物語なんですよ。原作は根強い人気があるし、キャラクターも魅力的だし、すでにしっかりファンもついているし、絶対にドラマ化するべきだと思っています。

 余談ですが、『タクミくんシリーズ』を映画化した時、ファンの方たちが本当に熱くて驚きました。公開当時、「タクミくんファン 九州支部」と名乗る30人くらいのファンが、手紙入りの分厚いアルバムを私宛に送ってくれて。中には「1万本見た映画の中で、一番よかった」なんて書いてあるんです。「そんなわけあるか!」と思うけど(笑)、とてもうれしかったですね。これだけ熱い作品なのに、テレビ局的には「倫理的にしんどい」らしく、ドラマ化を断られたんです。

――同性愛に対して倫理を問うとは……言葉を失います。

三木 「男性同士の恋愛モノは、いくら内容が深くても、倫理的にちょっと……」ってね。要するに、テレビ局には「恋愛は男女でするべきだ!」みたいな、古い固定観念が残っているんですよね。

――でも、今年1月クールには“デリヘル”を題材にしたドラマ『フルーツ宅急便』(テレビ東京)が放送されていました。これも「倫理的にしんどい」とツッコまれそうな題材ですが……。

三木 『フルーツ宅急便』はデルヘルを題材にしていても、監督が映画『凶悪』(13年)の白石和彌さんと、映画『横道世之介』(13年)の沖田修一さんなんですよね。彼らが監督で、濱田岳さんが主演という要素は、やはり強い。だから『タクミくんシリーズ』も、旬の監督や俳優をキャスティングできれば、状況は変わってくるはずなんです。脚本家も同様に、例えば「宮藤官九郎さんを連れてきました!」となれば、局上層部は彼が濃厚なBL作品を書いたとしても、「クドカンは知ってる! OK!」となっちゃうでしょうね。
(番田アミ)

■後編へ続く

最終更新:2019/05/10 21:00
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