『おっさんずラブ』BLブームはまやかし!? BL映画界のパイオニア語る“ヒット”のウラ側
――それは一体なぜでしょうか?
三木 大手の映画会社には、BLに魅力を感じる人や、作品としてやりたいと思う人が少ないんだと思います。一般的じゃないと思っているから、わからないプロデューサ―が多いなと感じます。一般的だと思わせるには、やっぱり「○○賞受賞」とか、監督・脚本家のネームバリューは大きいです。
例えば、日本で06年に公開された洋画『ブロークバック・マウンテン』も男性同士の恋愛を描いていますが、作品として素晴らしく、ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞、アカデミー賞で監督賞などを受賞しましたよね。このころまだ日本では、男性同士の恋愛を描いた作品は少なかったと思いますが、受賞をきっかけに「見てみよう」と思った人は多かったはずです。でも逆に言えば、賞を取らなかったら、どんなに内容がよくても“BL作品”で終わっていたかもしれない。結局、日本人って賞の権威とか、ヒット作を生み出した監督・脚本家に弱いじゃないですか(笑)。
――おっしゃる通り、「○○賞を取ったんだから面白いだろう」とか思っちゃいます(笑)。とはいえ、三木さんがBL映画を手がけていた約10年前と比べると、BL作品を映像化することに対するハードルが下がったような印象を受けますが、実際はそうでもないのでしょうか。
三木 確かに、市民権は得ました。当時、BL映画の出演者は2.5次元俳優が主でしたが、昔は2.5次元舞台自体、『ミュージカル「テニスの王子様」』くらいしかなくて、コアなファンだけのものでしたよね。それが今は2.5次元舞台の公演が増え、俳優のファン層も広がり、客がたくさんついていることを知った制作者が「2.5次元の舞台を作りたい」と思うようになった。なので、10年前よりも2.5次元俳優が出演する作品自体の注目度が上がったとは感じます。でも、それはそれ、これはこれ。“BL”を題材にした映画やドラマとなると、やはりまだまだ難しいです。