海外
[連載]海外ドラマの向こうガワ

『THIS IS US』5つの魅力――“ドラマ疲れ”のアメリカで、一見地味なファミリー作品が愛されたワケ

2019/04/12 21:00
堀川樹里
『THIS IS US/ディス・イズ・アス 36歳、これから Vol.1』

 4月からNHKのBSプレミアムでシーズン2が放送される『THIS IS US 36歳、これから』。家族愛、人間のつながりがテーマの一見地味なファミリードラマだが、アメリカでは大ヒットしている。

 物語の主人公は、シーズン1で36歳の誕生日を迎える“三つ子”。ケヴィンとケイトは血のつながった兄妹、ランダルは捨て子でケヴィンとケイトが生まれた病院に保護されたのだが、三つ子の一人を死産で失い、悲しみに暮れるジャックとレベッカ夫婦に見いだされ、引き取られた。3人は男気のあるジャックと、家庭を平和にするための努力を惜しまないレベッカから、無償の愛を注がれ育つ。

 ドラマは、「3人が36歳になり、ミッドライフ・クライシス(中年の危機)に足を踏み入れた現在」と「36年前に3人がこの世に生を受け育った過去」、「3人が生まれる前の遠い昔」を何度も行き来しながら、家族、人生、幸せとは何なのかを視聴者に問いかけながら進んでいく。

 昨年2月に放送されたシーズン2第14話の視聴数は、昨年アメリカで放送されたドラマのエピソードの中で最多を記録。シビアな評価で知られるレビューサイト「Rotten Tomatoes」でも、シーズン1・2は91%、シーズン3は94%と、高く評価されている。なぜ『THIS IS US 36歳、これから』は、ここまで全米から愛されているのか? その魅力をひもといてみたい。

魅力1)「THIS IS US、これは私たち」と思えるキャラクター

 このドラマの最大の魅力は、キャラクターの苦悩がとてもリアルで、深く共感できるという点だ。

 肥満を克服しようと努力しているケイトは、体形コンプレックスから自信を持てずにいる。また、美しく、プロポーションも良い母親と自分を比べてしまい、大人になっても母親に八つ当たりしてしまう。優しい彼ができても、細見でファッショナブルな元カノと自分を比べるなど、どうしても自分に自信が持てない。そう、ケイトは私たちそのものなのだ。

 俳優のケヴィンは人気コメディに主演していたが、道化師扱いされることに嫌気が差し、撮影中にブチ切れて番組を降板。長身イケメンがゆえに、中身を見てもらえずにいると悩んでいる。さらに小さい頃から人の意見を気にしてしまう癖があるため、あらゆる場面で決断がなかなか下せない。おまけに、「両親は、自分より養子のランダルばかりを愛してきた」と思い込み、愛に飢えている。

 そのランダルは超エリートで、高級住宅街に住み、美しい妻・かわいい娘たちに恵まれているが、どこか満たされない。育ての両親からは実子と分け隔てなく愛され、才能を伸ばすべく私立の小学校にも通わせてもらってきた。そのため、「期待に応える」ことを美徳としている。その結果、異常なまでの完璧主義者へと成長。過剰なストレスから一時的に目が見えなくなることもあるが、人の力は借りずに自分で克服。白人コミュニティで育ってきた彼は、人種差別されても気に留めず、軽く流すすべを身につけており、もやもやした気持ちを自分一人で抱え込む。

 三つ子のキャラクターは、見た目も性格も見事なまでにバラバラ。決して視聴者の人生と重なりやすいわけではないが、彼らの悩みの種が丁寧に描かれ、どのキャラクターの気持ちにも寄り添うことができるのだ。

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