片乳を出して「痴漢です、助けて」と大暴れ! 強烈な万引き犯「銀座のJUJU」の思い出
頭の片隅に「銀座のJUJU」の姿をおきながら店内の巡回を始めると、勤務半ばに、ネギトロ巻(598円)といくらのパック(798円)を懐に隠して盗んだ中年男性を捕捉することができました。身寄りもなく、ネットカフェで暮らしているという男性を連れて事務所の扉を開くと、ひどく慌てた様子のマネージャーが私に言います。
「ちょうどよかった。いま例の女が来たので、お酒売場に戻ってください」
警送処理をしている間は、堂々と座って休める貴重な時間です。しかし、初対面のマネージャーが、そんな私の気持ちを知る由はありません。中年男性の身柄をマネージャーに預けて、少し重い足取りで酒売場に向かうと、ラメ入りの黒いニットにタイトスカートという、まさに水商売の女性といった服装で、ウイスキーボトルを手にする「銀座のJUJU」の姿がありました。
それからまもなく、重く腫れぼったい目で周囲の気配を窺い始めた彼女は、肩にかけた大きめのエコバッグにウイスキーボトルを隠すと、続けて2本の焼酎ボトルも同様に隠しました。さらに、おつまみコーナーに移動して、サラミ、ビーフジャーキー、ミックスナッツ、酢いかなど、飲み屋で使うような商品ばかりを、次々とエコバッグの中に隠していきます。数分後、なに一つ買うことなく出口に向かった彼女は、一度も後ろを振り返ることなく外に出て行きました。しかし、エコバッグの開口部を閉じるように押さえているところを見れば、悪いことをしている認識は十分にあるようです。過去に暴れたことがあるというので、多少人通りの多いところまで彼女を歩かせた私は、逃走されぬようエコバッグの持ち手を掴んでから、優しく丁寧に声をかけました。
「お店の者です。そのバッグに入れたもの、お支払いしていただかないと……」
「はあ? なんですか? どれですか?」
こちらの現認状況を探るためなのか、万引き犯特有のセリフを吐いた彼女は、私の手を振りほどくべく、自分の体でエコバッグを引っ張っています。
「○×さん(「銀座のJUJU」の本名)、ここに隠したお酒とかおつまみのことですよ。逃げてもいいけど、カメラにも映っているし、前のこともあるんだから、あとで面倒なことになりますよ」
「……ごめんなさい」
自分の名前を言われて観念したらしい彼女を事務所に連れて行くと、先に捕まえた中年男性の処理がなされており、被疑者席のある応接室は警察官で埋め尽くされていました。