中学受験における「小4の壁」とは……営業ウーマンの母が「悔しがらない息子」を変えた方法
そこで、里美さんは難関中学に入学を決めたお子さんを持つ学童仲間の母に相談したそうだ。すると、その人にこんなアドバイスをもらったという。
「中学受験は発破をかけるだけで成績アップするような甘いものじゃないのよ。塾に行きさえすれば、全ての問題が理解できるようになると思っているとしたら大間違い。塾はね、日頃のお勉強の成果を発表するところでもあるのよ」
つまり、中学受験は家庭学習こそが肝であり、そのやり方をわかっていない子が、自分だけの力で勉強に取り組むようになるためには、親が少し伴走しなければならないという主張だったのだ。
そう言われて、里美さんは目が覚めたそうだ。
「自分は親に勉強を教わったこともなかったですが、とりあえず成績は良かったんですよね。でも、それは中学高校の話ですから、ある程度大人です。将司はまだ9歳なんだってことを考えていなかったんだと思います。それなのに、私の方が『友達のあの子には負けられない!』って思っちゃって、将司を怒ることしかしませんでした。新入社員にただ『営業成績を伸ばせ!』って言っても、途方に暮れるだけですよね。やはり、そのためには、ある程度のノウハウを教え、丁寧に育てないと一人前の社員にはなれません。『そうだ! 将司は受験の“新人”なんだ!』って思ったら、すごく納得感があったんです」
それから、里美さんは毎日、将司君の横で一緒に問題を解くことにしたそうだ。時には教え、時には教えられという時間を確保し、成績で怒ることを一切やめたという。
「小5の夏前頃から、これをやり出したら、徐々に将司が『ママ、勉強って楽しいね』って言ってくれるようになりました。私も仕事終わりに勉強の時間を確保することは大変だったんですが、だんだんとこの時間が愛おしいものに変わっていきましたね。私の反省点は、中学受験参入時にもっとどういう世界なのかをリサーチしておくべきだったということに尽きます」
中学受験は長丁場で、しかも「戦略ありき」の世界でもある。壁は小4だけではなく、次々と立ちはだかってくるものなのだが、その度に親は、試行錯誤を繰り返すことになるだろう。
将司君はこの春、理系教育に定評のある難関中学に入学する予定だ。
(鳥居りんこ)