中学受験における「小4の壁」とは……営業ウーマンの母が「悔しがらない息子」を変えた方法
冒頭で中学受験に参入する家庭は2通りあるとご紹介したが、この後者である「学童保育代わり」に中学受験塾を利用する母の中には、塾生活での「小4の壁」を自ら作り出してしまう人が出てくるのだ。
里美さん(仮名)のケースでお伝えしよう。とある企業で営業の仕事をしている里美さんは、息子・将司君(仮名)が小4になる際に、中学受験を選択した。理由は単純明快、それまで通っていた学童の待機児童になってしまったからだ。
学校が終わった後どうするか――選択肢として、「自宅に直帰してお留守番」「中学受験塾で午後7時まで過ごす」の2つが挙がったそうだ。
結局、仲の良い友達が中学受験を選択したということが大きな後押しとなり、里美さんいわく「私の残業の受け皿」として、将司君を塾に行かせることにしたという。
しかし、里美さんは夫婦ともども中学、高校は公立だったこともあり“中学受験”という世界をまったくイメージできないまま、受験生活に突入したのだそうだ。中学受験塾は、やはり“塾”なので、遊んで終わりということはなく、そこには必ず“成績”という評価が下されるのだ。里美さんは次第に、成績が上がらない将司君にイライラするようになったという。
「私も営業の仕事なので、その成果を毎月、上から厳しく問われます。歩合ということもあり、その成績がお給料にも直結してしまうので、気が抜けないのです。なのでやはり、自分なりに悪いところがあったら、こう対策してみようとか、いろいろ戦略を考えるのですが、将司は成績に無頓着というのか、悪くても、できなくても、まったく悔しがる様子もなく、一緒に入った友達との成績は開く一方。だんだん将司に怒鳴り散らすことが多くなりました」
当初、中学受験塾は、単に「残業の受け皿」でありさえすれば良いと思っていた里美さんだが、本来の負けず嫌いの性格が顔を覗かせてしまい、簡単に「成績至上主義」に陥ったという。
しかし、将司君は叱られれば叱られるほど、ゲームに熱中するようになり、しかし「受験はやめない!合格できる!」と言い張るため、余計に親子バトルが過熱していったそうだ。
里美さんは当時を振り返ってこう言っていた。
「あの頃は私も昇進したばかりで、仕事にプレッシャーを感じていました。考えてみれば、将司は机に向かって勉強する習慣もまったくないまま、受験塾に親の都合で入らされたようなものです。本人にしてみたら、何をどうやっていいのかもわからない、それこそ、ノートの取り方ひとつ、進みの早い塾では追いついていくことができなかったんだと思います……」