なぜ「オマンコ」はタブー? 女陰語研究者の『探偵!ナイトスクープ』プロデューサーに聞く
東京語の「オマンコ」、九州地方に多い「ボボ」などは、今では人前で決して口に出すことができない卑猥語のような扱いになってしまっているのが現状だが、松本氏が言うには、明治時代あたりまでは、女性自身が誇りをもって、日常的に話していたという。
「明治ごろまではまだ江戸時代の名残があり、女性も普通に女陰語を誇らかに使っていました。しかし、西洋の価値観、文化、思想の流入の影響を受けたせいで、女陰語が『はしたない』『恥ずかしい』ものだとされ、特に大正時代以降から徐々に言えなくなり始めたのです。そして、昭和、戦後、平成になると、公的な場所では誰も口にすることができなくなりました」
しかし、女陰語の歴史をひもとけば、当時は「オマンコ」や「ボボ」も決して下品でも、不潔でもない言葉なのだと、松本氏は強調する。
「文献を見れば、『ボボ』は安土・桃山時代、都の婦女子が自由に使っていた女陰語でしたし、徳川時代は、上方、江戸どちらでも『オマンコ』という言葉を口に出すことは女の子にも、カッコイイことでした。今、『オチンチン』『オチンコ』と言う以上に、愛すべき、かわいい言葉だったのです」
女陰語だけが言えないのはかえって女性差別
昨今、性教育の重要さが再認識されている現状においても、女陰語を教えられることはほとんどない。
松本氏は、知人が授業参観の様子を教えてくれた際、その授業内容に驚愕したという。
「女性の先生が小学2年生の子どもたちに『男根を“ペニス”、女性器は“バルバ”』と教えていたのです。バルバはペニスと同様ラテン語で、欧米では医学用語として使われているようですが、それならオマンコ、ボボこそ、はるかにさわやかで、美しいですし、わざわざラテン語を持ってくるとは、あきれます」
男根語は比較的気軽に口に出せるにもかかわらず、女陰語はまったく言えない。これこそ女性差別以外の何ものでもないと、松本氏は憤る。
「大正時代からの約100年、女陰語が事実上、言葉として抹殺され、まったく発することができない状況は、女性差別と言うしかありません。『オチンコ』が言えるのなら、『オマンコ』と言って何が悪いのでしょうか。もしも『オマンコ』が今となって卑猥に聞こえてしまうなら、京都で近年まで女性のための上品な言葉として使われてきた『オソソ』と言っても構いません。日本も男女平等を目指すならば、この男女差別の状況を変えなきゃいけないでしょう」
セクハラなどへの意識が高まっている日本社会ではまだまだ、女陰語を気軽に言える状況にはない。「ただそのような風潮こそが本来、女性に対するセクハラなのだ」と、松本氏はいう。
この自主規制が強い日本で皆が「オマンコ」と気兼ねなく言える日は来るのだろうか。
(福田晃広/清談社)