コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

「10戦1勝9敗」中学受験で不合格連発……「闇落ち」する親子と「立ち直る」親子の違い

2019/02/10 19:15
鳥居りんこ

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

 今年も中学受験が終了した(2次募集などを除く)。中学受験は「1点差の勝負」と言われるほどに、僅差の戦いになっていくため「まさかの不合格」に呆然とする親子もまた多い。また受験に“絶対”はないので、当日のコンディション次第で、良くも悪くも“大どんでん返し”が起きてしまう世界である。ゆえに、波に乗れないと信じられないほど「合格切符」が遠のくケースも続出するのだ。そんな「まさかの不合格」をもらったとき、親の対応が、子どもの人生を左右することもある。今回は2人の女の子の話をつづってみたいと思う。

「もう、どこにも受かる気がしない!」と涙

 加奈ちゃん(仮名)も、合格切符をなかなか得られず、苦戦した受験生の一人だった。1月受験が不合格で、気落ちしたまま2月1日の安全校に臨んだが、まさかの不合格。完全に自信を失ったまま受けた翌日の本命校でも力を出し切れず撃沈。4日まで、連続して5校を受け続けたものの、一つも合格をもらうことができなかった。

 「もう、どこにも受かる気がしない!」と泣き喚く加奈ちゃんに、塾の先生はある学校を受験するように指導したという。そしてついに2月5日、8校めとなる、加奈ちゃんの母である幸美さん(仮名)いわく「聞いたこともないA学園」に合格を決めた。

 その後、幸美さんは、6日に行われるA学園よりも偏差値が高い学校の受験を強烈に推し、嫌がる加奈ちゃんを無理やり会場まで引っ張っていったという。そして、不合格。加奈ちゃんの受験は、1月校も含めると、10戦1勝9敗であった。

 加奈ちゃんは、A学園に進学したが、ある日筆者は、幸美さんからこんな相談を受けた。

「加奈が不登校になってしまいました。私のせいです……。時間を戻すのはどうすればいいですか」

 当時の幸美さんには、1勝9敗という結果も、A学園進学という事実も到底受け入れられるものではなかったそうだ。

「小学校1年生から中学受験塾に通わせていたのに、このザマか……って思ったら、もう情けなくて、悔しくて、それで、その気持ちをつい加奈にぶつけちゃったんです。『ママはアンタが恥ずかしい!』『こんなバカ学校にしか行けなかったのかって、近所のいい笑いものだわ!』って……」

 加奈ちゃんは現在、中学2年生に当たる年齢だが、A学園の入学式には出たものの、その後は家に引きこもった暮らしをしているそうで、幸美さんは加奈ちゃんの昼夜逆転生活に悩んでいるという。なぜあのとき、ひどい言葉をぶつけてしまったのか。どれだけ後悔しても、時間は戻らないのだ。

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