「ミニスカートが性犯罪誘発」「これもセクハラ?」女性を不快にする表現がなくならないワケ
――昨年11月には、俳優・東幹久さんが起用された内閣府の「セクハラ防止啓発ポスター」が炎上しました。「痩せてきれいになったんじゃない?」「今日の服かわいいね。俺、好みだな」といった言葉に不快感を示す女性のイラストとともに、困り顔の東さんの顔写真が掲載され、大きく「これもセクハラ?」というメッセージが掲載されています。「セクハラする男性側の『これじゃ何も言えない』『俺が悪いの?』という声が聞こえる」「セクハラを軽く扱いすぎている」などの批判が飛び交いました。
田中 このポスターが炎上した理由の一つとして、東さんが“表現力のある優秀な俳優である”ことが挙げられると私は思っています。東さんの表情について「俺が悪いの?」といっているように見えるとの指摘がありましたが、彼はこれまで、女性を狙うギラギラした役を演じる機会が多かったような印象があり、そういった役のイメージを、写真1枚で見る人に想起させてしまったのではないかな……と。このポスターは、見る人が“ここに描かれていない意味”を読み取れてしまうつくりになっているように思うんです。
もちろん、ポスターのつくり自体にも問題はあります。「これもセクハラ?」の文字が大きすぎて、「セクハラを決めるのは、あなたではない!」というその下のメッセージがあまり目立たない。それから、東さんが「これもセクハラ?」と発言しているように見えてしまうデザインも、加害者を擁護していると誤解されてしまう原因になってしまったのではないでしょうか。例えば、「これもセクハラ?」を「これもセクハラ!」に変えて、「セクハラを決めるのは、あなたではない!」というメッセージを添えていたなら、炎上しなかったのかなと思いますね。
――「?」(クエスチョンマーク)を「!」(エクスクラメーションマーク)に変えるだけで、かなり印象が違います。
田中 「これもセクハラ!」にすると、東さんではなく、セクハラを受けた女性側の台詞という印象になるんです。「?」を選んでしまった時点で、このポスターは男性に寄り添いすぎているんですよね。だからこそ、「?」をつけてしまったのかもしれません。
――男性側に対する過剰な配慮を感じるというか、一種の甘やかしではないかとさえ思ってしまいます。
田中 「男性に甘い」風潮と言うと、日本の男の子は、とにかくお母さんから甘やかされている傾向がありますよね。娘には家事の手伝いをさせるけど、息子にはさせないといったお母さんは結構いて、そこが「男性に甘い」の根っこになっているような気がします。ただし最近は、娘にも息子にも平等に手伝わせているという家庭が増えているとは聞いています。特に共働き家庭なのに夫が家事をしないことに不満を抱き、「この悪の連鎖を断ち切る!」との思いで、息子にもしっかり手伝いをさせるという人もいるそうです。これからは“子どもの性別問わず”という育て方が重要になると感じています。