女子小学生の常習犯を捕捉! 万引きGメンがいまだかつて聞いたことのない「盗みの理由」
「今日は、どうしたの? こんなにたくさん……」
「みんなお年玉で好きなモノ買っているのに、私はもらえなかったから……」
目の前のデスクに並べきれず、山積みにされたブツを前に泣き咽ぶ女の子を宥めながら事情を聞くと、今までに聞いたことのない言い訳を耳にすることになりました。お年玉をもらえなかったから万引きしたというのは、一体どういうことなのでしょうか。
「お年玉もらえなかったんだ?」
「ウチは8人きょうだいだから、そんなお金はないって……」
聞けば、8人きょうだいの7番目だという女の子は、兄弟が多すぎるためにお年玉がもらえないらしく、そのストレスから万引きしたようです。通報要件の聴取を終えたので、店長に事後の判断を仰ぐと、どこか悲しげな表情をした店長が、山積みにされたブツを見ながら言いました。
「これ全部、自分で使うつもりだったのかな?」
「ううん。ウチのみんなにも、分けてあげるつもりで……」
「もしかして、誰かに頼まれたの?」
「お兄ちゃんが、バッグを貸してくれたけど……」
同じ商品を複数ずつ盗んだのは、家族に分け与えるためだと話した女の子は、デスクに顔を伏せると派手に泣き始めました。少し可哀想な気もしますが、今回の被害は、計59点、被害額合計は1万8000円相当に上っています。たとえ、お兄ちゃんの指示があったにせよ、自分の好きなモノもたくさん盗んでいるので、さほど同情できない状況といえるでしょう。その後、警察に引き渡された女の子は、触法少年扱いとなり、厳重注意の上で保護者に引き渡されることになりました。
その日の下番時。業務終了の挨拶のため事務所に顔を出すと、女の子と母親らしき女性が、少年課の女性刑事に付き添われて謝罪に来ている場面に遭遇しました。刑事さんが謝罪に同行することは珍しく、何かあったのかと、報告書を用意しながら聞き耳を立てます。
「この度は、ウチの娘が申し訳ありませんでした。恥ずかしながら、商品を買い取るお金は用意できないんですけど、お許しいただけますでしょうか?」
恐らくは、金がなく謝罪に来たがらない母親に、保護者としてのけじめをつけさせるために、お目受け役として刑事さんが同行してきたのでしょう。下唇を噛んで、居心地悪そうに俯く女の子の顔が痛々しくて、お年玉をあげたい気分になりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)