歌舞伎町の元風俗嬢が語る、愛しき“ホス狂い”たち――「滑稽だけど大真面目」な素顔
ホストにハマりすぎている女たち――通称“ホス狂い”。「ホストに多額のカネを貢ぐ女」というイメージだけが横行する中、外の世界からはわからない彼女たちの悲喜劇がある。「ホストにハマらなかったら、今頃家が建っていた」という、新宿・歌舞伎町では名の知れたアラサー元風俗嬢ライター・せりなが、ホス狂いの姿を活写する。
「ホス狂いに興味があるんですけど、ホス狂いって面白いですよね」
歌舞伎町のバーで友人といつも通り、ホストがどうだ風俗客がどうだと話していたとき、隣のテーブルにいた女性から突然話しかけられた。なんて失礼な奴だ、と思った。後の担当となるサイゾーウーマン編集者である。
女性は続けた。
「私はホストには行ったことがないけれど、ホス狂いのTwitterはよく見ています」
もうこのパターンは絶対にろくなことにならない、この先の会話は地獄だ、と直感が囁いていた。大体、ホストクラブに行ったことがないのにホス狂いやホストのTwitterをチェックしてるってどういう動機なんだ。私は元風俗嬢だが、初対面の男性に、風俗には行かないけど風俗界隈の情報はチェックしている、とか言われたらたぶんちょっと引く。
「本営って言葉があるじゃないですか、それに色恋、友営、エース、ラスソン、そういうシステムが面白いって思っていて」
女性はホスト用語にやたらと詳しかった。行ったことがないのに。
「本営」とはホストの接客スタイルの1つで、お客と付き合って恋愛関係になることを指す。「友営」とは読んで字のごとく、友達のような接客スタイル。「エース」とはそのホストのお客の中で一番お金を使う人間のことだ。本営と兼ねる場合が多く、その場合は「本営エース」なんていう呼ばれ方をする。「色恋」とは、恋愛関係を期待させるような営業方法のことだ。
過去を振り返りながら女性にそんな説明をしていた。気がつけばウーロンハイは3杯目に突入している。私もおしゃべりが好きなのだ。
確かにホストの世界には仲間の中だけで使える用語が多い。それはアイドルの世界と似ている――例えば「推し」や「認知」といった独特の言葉があるように。最近はNHKでホストに貢ぐ女の特集がされたり、Twitterで人気があるホス狂いアカウントのつぶやきをまとめた本なんかも出版されたりしている。