松坂桃李『娼年』への熱狂、百貨店でバイブ販売――2018年セックスカルチャー5大ニュース
ファッショニスタが愛読しているはずのwebサイト「ELLE ONLINE」に、突然「膣、それはあなたのすべてを現す宇宙」という見出しが踊ったのは10月のこと。一体、何が起きている!?
そこでは植物療法士・森田敦子氏が、独自すぎる理論を展開していました。いわく、「膣は単なる子宮の入口にとどまらず、私たちの健康と切り離せない、ひとつの宇宙のような重要な存在。これ以上大事なパーツはない」。膣も臓器の1つであるかぎり健康との関連はわかりますが、それがなぜ宇宙? しかも脳や心臓以上に大事といわれても、頭に疑問符しか浮かびません。
さらにはセックスを面倒に感じる女性のことを、「感受性まで乏しい」「感動できず、常にイライラし、ときにヒステリックになる」とその人格面まで否定します。
しかし、この言説はある意味、多くの女性にとってなじみ深いものでしょう。女性が不機嫌だったり強い意見を言ったりするだけで、「生理でしょ」「更年期じゃない?」「欲求不満だろ」と、なぜか女性特有の生理現象と結びつけられることが多々あります。お笑い芸人が、ショーレースで厳しい採点をした60代の女性タレントのことを「更年期障害か」とこき下ろしたのとまったく変わりません。
膣と宇宙という荒唐無稽な内容に記事は大炎上し、同サイトはすぐに非公開としましたが、最も大きな問題は「生殖器にかこつけて、女性の人格を矮小化したこと」にほかならないのです。
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ひと昔前であれば考えられもしなかった“オープンなセックスカルチャー”を感じるニュースが多かった一方で、ひと昔どころか、何十年も前に逆行したかのようなニュースもありました。
膣を過剰に神聖視するコンテンツは森田氏以外にもあちこちで見かけます。子宮を大切にすれば幸せになれると説く“子宮系”の亜種にも見えますが、子宮にしろ膣にしろ、もともと女性がコンプレックスを持ちやすかったり健康面の不安を感じたりしやすい臓器だけに、つけ入りやすいのでしょう。
いずれにしろ女性が性を肯定的に捉え、愉しむ妨げとなる言説です。今秋には、森田氏の弟子的な立場にある女性が本を出版、やはり膣を取り上げています。19年も引き続き、この方面への目配りを忘れずにいきたいと思います。
(三浦ゆえ)