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田中圭、『獣になれない私たち』『おっさんずラブ』の根底にある“無自覚な色気”の正体
2018/12/10 21:00
田中は現在34歳。2000年から活動しているキャリアの長い俳優とはいえ、主演作は少なく、脇で印象に残る仕事をする存在だった。しかし今年、連続ドラマ『おっさんずラブ』(テレビ朝日系)に出演したことで、大ブレークを果たす。33歳の会社員・春田創一(田中圭)が、上司の黒沢武蔵(吉田鋼太郎)と、ルームシェア中の後輩・牧凌太(林遣都)から告白され、男同士の三角関係に頭を悩ませる話だ。
春田は、少し幼くて優柔不断なところがあるものの、基本的にはどこにでもいる30代の男だ。よく言えば無垢、悪くいえば鈍感な春田の行動に周囲の人々が振り回されることになり、個性豊かな面々の中心に無自覚で鈍感な春田がいるという人物相関図が、ドラマを面白くしていた。
『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)で演じた不倫するサラリーマンなど、田中は一見、ぱっとしないが、なぜかモテる男性を演じることが多い。『おっさんずラブ』の春田も『けもなれ』の京谷も、本人は無自覚なまま、周囲の人々の気持ちを吸い寄せて呑み込んでいく“愛情のブラックホール”とでも言うような存在だ。
この無自覚な色気のようなものが、演技の枠を超えてタレント人気となっているのが、今の“田中圭ブーム”なのだろう。12月15日にはAbemaTVで『田中圭24時間テレビ』という番組まで放送される。
高橋一生やムロツヨシなど、脇で堅実な仕事をしていた俳優が注目される傾向が近年強まっている。田中のブレークはその最たるものだが、『おっさんずラブ』の映画化も決まった今、この盛り上がりは、しばらく収まることはなさそうである。
(成馬零一)
最終更新:2018/12/10 21:00