サイゾーウーマン芸能テレビドラマレビュームロツヨシ『大恋愛』引き算の芝居 芸能 ドラマレビュー ムロツヨシ『大恋愛~僕を忘れる君と』、“押し”だけじゃない引き算の演技の実力 2018/11/19 21:00 ドラマレビュー 足し算の演技で押すだけじゃない ムロは現在42歳。もともと、小劇場を中心に活躍する俳優だったが、2005年に本広克行の映画『サマータイムマシーン・ブルース』に出演して以降、映像作品の出演が増えていく。中でも『勇者ヨシヒコ』シリーズ(テレビ東京系)等で知られる福田雄一監督のコメディドラマの常連で、佐藤二朗と共に、福田ドラマの看板とでも言うべき存在だ。 現在も『大恋愛』と同時に、福田雄一脚本・演出のドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)に出演中。この作品でのムロは『3年B組金八先生』 (TBS系)の金八先生の格好をした教師を演じており、こちらでは脱力感のある笑いを見せている。ムロツヨシ=コメディ俳優というイメージが強いため、『大恋愛』のようなシリアスなドラマ、ましてや、戸田恵梨香という人気女優の恋人役を演じると知った時はとても驚いた。 真司という役柄も面白い。武田鉄矢が浅野温子の恋人役を演じた『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)のような「美女と野獣」路線を狙ったコミカルな役になるのかと思っていたが、ムロが演じる真司はどこか影のある男で、劇中では捨て子だったという暗い過去も明らかになる。つまり、“かっこいい男”としてムロを見せているのだ。お笑い芸人・サンドイッチマンの富澤たけしが演じる、アルバイト先の引っ越し屋の先輩もかっこよく描かれる。この2人がかっこいい男として描かれ、松岡昌宏が恋敵として登場する配役の絶妙さが、本作を面白くしている。 基本的にコメディができる俳優はシリアスもうまい。古くは渥美清や西田敏行。最近なら阿部サダヲ、若手なら濱田岳や矢本悠馬がそうだが、コメディを得意とする俳優に、シリアスな芝居をさせると、魅力的な演技をすることが多い。それはムロも同様である。例えばマンガ業界を舞台にしたドラマ『重版出来!!』(TBS系)で演じた、漫画家のベテランアシスタント・沼田の苦悩を演じた芝居はとても印象深かった。 その意味でムロがシリアスな芝居もうまいことは、すでにわかっていたことだが、恋愛ドラマの主人公に持ってくるという大胆な采配は誰にも思いつかなかったことだろう。 現在、物語は折返し地点に入っている。今後は、記憶をなくしていく尚を、真司がどのような気持ちで受け止めるのかが、見せ場となる。今後、ムロに求められるのは、悲しみをぐっとこらえる泣きの芝居だが、この“受け”の芝居もこれまたうまいのだ。 『大恋愛』で印象的なのは、台詞をしゃべらずに表情だけで見せる場面だ。中でも第5話の本心を隠して尚と別れようとする時の表情は素晴らしかった。コメディの時は、細かいギャグをいれて足し算の演技で押してくるムロだが、シリアスの時は引き算の演技で、ぐっとこらえる姿を見せることで、真司の心情を視聴者に想像させる。この引き算ができるからこそ、シリアスな恋愛ドラマでも成功したのだろう。 (成馬零一) 前のページ12 最終更新:2018/11/19 21:00 Amazon 舞台「スジナシ BLITZシアター Vol.5」 ゲスト:ムロツヨシ【TBSオンデマンド】 もうそろそろMJとつるまなくてもいいじゃない? 関連記事 佐藤健、『半分、青い。』律役と『義母と娘のブルース』麦田役で光った「静と動」瀬戸康史、『透明なゆりかご』由比院長で完成した『あさが来た』以降の男性像『おっさんずラブ』、ドラマ史に残る失恋シーンを演じた吉田鋼太郎の演技力『ブラックペアン』嵐・二宮和也に拍手喝采、イラつかせる“チンピラ演技”の魅力とは高橋一生、『僕らは奇跡でできている』が初主演作として“ある意味”成功といえる理由 次の記事 関ジャニ∞ファンが公演生配信 >