オリラジ・中田敦彦の「いい夫」エピソードに見る、「仏作って魂いれず」の妙な夫婦関係
羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます
<今回の有名人>
「だめな妻とか夫と思われるんじゃないかという意識があるから、相手に合わせちゃう」福田萌
『ノンストップ』(フジテレビ系 11月2日)
かつて本連載で書いたように、私はオリエンタルラジオ・中田敦彦は「高3メンタリティー」だと思っている。受験生は、合格のためにひたすら努力し、合格を勝ち取る。受験の世界では、心から入りたいと思う偏差値の低い学校よりも、興味は持てなくても偏差値の高い学校に入った方が評価される。中田はもちろんもう受験生ではないが、いつも「自分がこうしたい」という気持ちはすっ飛ばして、「難しい何か」になろうとしていると感じることがある。
中田のことを、「高3メンタリティー」だと思うようになったきっかけは、あるテレビ番組での発言だった。正確な番組名は失念したが、中田がタレント・福田萌と結婚する前、「俺も“イケムコ”にならなくちゃ」と言っていたのを覚えている。当時、男性は女性ほど結婚式の準備に乗り気でないと言われていた中、イケてる婿、略して「イケムコ」は自分から率先して準備に参加するらしい。
結婚式の準備に男性が消極的である場合、女性が不満を抱くのは、労力のアンバランスさよりも、「男性が結婚式を楽しみにしていないのではないか」といった愛情の少なさだろう。しかし、中田は自分だけでなく人の気持ちの機微にも興味はない。ただ、難関大学の合格を勝ち取るのと同じで、「イケムコ」という「難しいモノ」になりたがっているように、私には感じられた。
日本の男性にとって、今、一番難しい役職。それは「いい夫」だろう。稼いで浮気をしないというのは、昭和の価価値観で、現代の「いい夫」とは、それに加えて育児参加が求められている。
なるのが難しいと聞くほど燃える「高3メンタリティー」に思える中田が、イクメンに挑戦しないわけがない。福田が『ノンストップ』(フジテレビ系)で明かしたところによると、中田は、福田が睡眠に関する不満を多く抱えていることに気づき、「子どもの授乳は自分がやるから、朝まで1人で寝るように」と申し出てくれたそうだ。妻のケアを怠らない中田は、条件的には「いい夫」と言えるだろう。しかし、その中田が10月、情報サイト「日経DUAL」で「良い夫をやめる」と宣言して、話題を呼んでいる。
中田の言い分をまとめると、趣味の自転車をやめる、たばこをやめるなど、福田の嫌がることはやめ、住む場所、広さ、インテリアも福田に合わせ、運転免許も取り、「なるべく家にいてほしい」という福田の要求に応えるため、仕事も整理し、家事もシェアしてきたそう。それなのに、福田に「あなたは何も変えてくれなかった」「あなたはただ成功したいだけの人」と怒られたという。
中田は、カウンセラーに見てもらった結果、自分があまりにも福田の要求に応えてきたため、福田が「やってくれた」ことではなく「やってくれなかった」ことに目がいくようになったと、自身で分析している。そこからなぜか「『夫婦関係、親子関係は、絶対に維持しないといけないものではない』と位置付ける」「妻と別れてもいいし、子どもの親権は渡していい」などと、離婚も辞さないというような方向に話が進んでいるのだ。受験には合格と不合格というふうに、結果は2つしかない。結婚生活に文句を言われたら、離婚という極端な発想も、いかにも「高3メンタリティー」の中田らしい。