「非常にオカルト的」キャベツ枕、里芋湿布……ネットでウワサの“自然療法”を内科医が斬る!!
◎アロマオイル
香りを楽しんでリラックスするためや、マッサージに使用するイメージの強いアロマオイルは、風邪の諸症状にも効果的との説がある。特にペパーミントは「鼻水や痰を排出しやすくする」、ユーカリは「抗ウィルス作用がある」などと言われ、心身の健康を保つ療法という「アロマテラピー」も存在するが……。
【星野先生のコメント】
アロマセラピーとは、植物由来の精油を使用することで自然治癒力を高め、心身の疾病予防や治療を行う療法を指します。ここ数年、「メディカルアルマセラピー」として、末期がん患者への緩和医療や妊産婦への抗不安対策として注目を集めています。匂いの刺激は、鼻腔の奥にある嗅覚器へ伝わり、匂いを識別する嗅細胞、そして脳へと伝わると言われており、脳の深いところに直接伝わることで、自律神経や内分泌系、感情、行動に働きかけることは多数の報告がなされております。
ペパーミントやユーカリの作用については実験レベルでは報告があるものの、以前からある「タイガーバーム」などの効果と同様と考えられます。ただし、乳幼児などは肌が敏感であり、かぶれたりする危険性もあるため、注意深く使用する必要があることや、あくまで精神的な安定などが主眼であり、補完的治療法と考えられています。
◎豆腐湿布、里芋湿布
豆腐や里芋をすり潰したものを、湿布のように打身や捻挫の患部や発熱時のおでこなどにあてる療法。豆腐には、カリウムや水分が豊富に含まれ、それらが毒素を除去して余分な熱を取ると言われ、一方の里芋は、カリウムが汚血を吸い出し、熱を解消してくれ、なんとがんにも効果的と謳われているが……。
【星野先生のコメント】
豆腐や里芋は代表的な和食の食物として栄養価も高く、風邪などの体が弱ったときだけでなく、日常的に摂取することでバランスの良い食事としてはとても有用です。ただし、皮膚や患部に貼付することで“毒素”を取り除いたり、“カリウム”の作用によって自然と熱が下がるというようなことは医学的も科学的にもあり得ないと言えます。むしろ、傷口や潰瘍部分に、“衛生的に”不潔な食物をあてたり、すりこむことで、雑菌などが侵入し、感染する危険性もあります。
里芋湿布は、がんにも効果的と言われているそうです。がんで腹膜播種になっている方が、里芋湿布(準備として、汚血を集めるという生姜湿布も実施)を行ったところ、皮膚から黒い塊が出てきた、これは腫瘍の一部が吸い出されたのではとしている報告を見たことがありますが、実際には、腹膜播種が自壊して皮膚を突き破り、壊死した血液や膿瘍などが認められたと考えられます。
また、里芋湿布は、胸水や腹水を吸い出すとの説もありますが、胸水や腹水は多い場合数十リットル単位にもなり、腹腔内の水が皮膚から漏れ出てくるということは考えられません。また、もしカリウムの抗癌作用が非常に強いと考えられるのであれば、カリウム製剤を直接ふりかけるか注射でもすれば全部のがんが消えるという話になってしまいます。