「万引き依存症」と「発達障害」の生きづらさとは? ひとごとではない問題の実態
生きづらい。現代を生きる、決して少なくない人が、そう感じることがあるに違いない。そして万引き依存症に陥る人や発達障害を抱える人だって、生きづらさを抱えている。著書『万引き依存症』(イースト・プレス)を執筆した精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳さんと、自身も発達障害当事者として発達障害の人々にインタビューした『私たちは生きづらさを抱えている発達障害じゃない人に伝えたい当事者の本音』(同)の著者であるライターの姫野桂さんに、万引き依存症に陥る人や発達障害を抱える人の「生きづらさ」について語ってもらった。2人の対談で、決してひとごととは思えない“生きづらさ”の実態が浮き彫りになった。
■発達障害の二次障害から依存症に陥るケースは多い
――「万引き依存症」と「発達障害」、それぞれの定義を教えてください。
斉藤章佳さん(以下、斉藤) まず、依存症とは物質・行為・関係によって何らかの社会的損失や身体的損失、経済的損失があるにもかかわらず、それがやめられない状態のことをいいます。大きく分ければ、物的依存・行為プロセス依存・関係依存の3つ。今回、著書のテーマにしている“万引き依存症”は行為プロセス依存にあたります。
姫野桂さん(以下、姫野) 発達障害はASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動性障害)・LD(学習障害)などで知られていますが、生まれつきの脳の発達の偏りによって、日常生活に支障を来す障害。支障とは具体的に、対人関係がうまくいかない、不注意・衝動的な行動で自分または周囲の人が困っている状態です。そして脳に偏りがあっても、本人が生きづらさを感じず、周囲の人も困っていないうちは、障害化していないといえます。
斉藤 二次障害(発達障害に関連して起こる二次的な別の障害)があるかないかが、ひとつの基準になりますよね。ちなみに発達障害の二次障害から、なんらかの依存症に陥るケースは多々見られます。
姫野 そうなのですね。著書『私たちは生きづらさを抱えている』でも書いた通り、私は発達障害当事者なのですが、今思えば、社会人1年目はアルコールに依存していたのかも……。仕事から帰宅したら、手頃に酩酊状態になれる発泡酒のロング缶を3〜4本飲まないと眠れなかったので。
斉藤 発達障害の二次障害で多いのは、アルコール依存症や薬物依存症などの物質依存と行為プロセス依存のギャンブル障害なんですよ。一次障害としての発達障害は脳の器質的な障害なので、ここを変えるのはなかなか難しい。だから、発達障害の人々はそれを抱えながら社会適応しないといけないという生きづらさがあるわけです。そこから二次障害としての依存症に陥る人には、なにかに耽溺することで、自己治療として繰り返しているケースが多いです。