万引きGメンに捕まって“失禁”――店長も呆れ果てた「タワマン専業主婦」が盗んだモノ
お立ちいただいた状態で身分確認などの事後処理を進めていくと、31歳だった彼女は、この店の近くにあるタワーマンションに住む専業主婦であることがわかりました。末尾の番号を見れば3500番台なので、さぞかし景色のよろしいお部屋なのでしょう。それを見た女性店長が、嫌味たっぷりな様子で彼女に言いました。
「あんなに立派なタワーマンションにお住まいなのに、なんでこんなことするんですか。粗相までして、どれだけ迷惑かければ気が済むのよ」
「本当に、すみません。実は、夫と離婚することになって、来週には引っ越さないといけないんです。生活費ももらえてないし、なるべくお金を使いたくなかったから……」
続けてバッグに隠した商品を出させると、この店で盗んだ高級ハムやベーコン(2,500円相当)のほかに、この店では扱っていない可愛らしい子ども向けのハンドタオルやキーケース、ハンドバッグなどの商品も出てきました。全てが新品である上、値札がついたままの状態なので、いましがた盗んできた感じにしか見えません。それを彼女に尋ねると、この店に隣接する人気雑貨店で盗んできたと、呆気なく白状しました。複数の店舗で万引きすることを、我々は「ハシゴ」と呼んでいますが、ここにまで至るのは常習者の証といえるでしょう。
「こんなに盗んじゃって……。今日は、どうしちゃったんですか?」
「明日は、娘の誕生日なんです。誕生日プレゼントを買ってあげるお金もないから仕方なかったんです」
彼女の話に嘘がないとすれば、かなりの苦境にあるようですが、盗んだ商品で愛娘の誕生日を祝う心境は理解できません。それを聞いた店長も呆れてしまい、近くの店員さんに、商品である下着とスウェットを用意させると、彼女のトイレに付き添うよう指示してから売場に戻っていきました。まもなくしてキッチンペーパーと除菌スプレーを手に戻ってきた店長が、それを私に押しつけるようにして言います。
「通報してきますので、あとはお願いします」
どうやら掃除を担当するのは、またしても私のようです。濡れた丸椅子の黒い合皮には、彼女のお尻の形がくっきりと残されており、とても嫌な気分になりました。
(文=澄江、監修=伊東ゆう)