強盗・強姦未遂事件に遭い、暗闇の中「死ぬ」と覚悟……シングルマザーの実体験告白
「犯される」「殺される」という思いが頭の中を駆け巡り続け、犯人との揉み合いは、永遠に続くようにも、時間が止まったようにも思えました。危機感からか、悲鳴は張り裂けるような大声が出て、すると口を塞ごうと男は何度も何度も抑え込んできて、終いには、口の中に指を入れてきたので、それを思いっきり噛んだのを覚えています。
大声を叫び続けたからか、噛みついたのが効いたのか、民家の犬がすごい勢いで鳴き始めたからか、男は急に立ち上がって走り去っていきました。
お財布を盗られたと気づいたのは、パニック状態が治まってからでした。
30分以上たっても到着しない警察
犯人が走り去ったといっても、また戻ってくるかもしれないという恐怖は残ります。とにかく暗闇が怖くて、怖くて、怖くて、まだ距離のある自宅まで歩いて帰ることができず、現場から一番近い知人の家である焼肉屋さんへ助けを求めに全力で走りました。
焼肉屋さんの玄関の前で、自分の足が小刻みに震えていると気づいたことを覚えています。ご主人と奥さんは、快く店の奥の自宅に迎え入れてくれて、うろたえている私の代わりに警察と自宅に電話をしてくれました。温かいカフェオレまで出してもらい、本当に救われました。そして心からホッとした瞬間、やっと自分が生きていると実感したのです。
しかし、110番通報をして30分以上たっても何の音沙汰もない警察には、イライラと不信感が募っていきます。私にとって一大事の事件でも、警察からしたら取るに足らない案件なのだと痛感しました。
やっと到着した警察官に状況を説明すると、そのまま犯行現場での現場検証を行うことに。その後、鑑識による捜査やDNA採取、さらに調書を取るため深谷警察署に連れて行かれ、一睡もしないまま朝を迎えました。
あれから4カ月がたとうとする今、犯人はまだ捕まっていません。その恐ろしい男は、何事もなかったように日常生活を送っているのです。しかし、私自身は事件前日までの自分と、被害に遭ってからでは、まるで別人になってしまったように感じます。テレビや新聞で報じられる凄惨な事件の被害者たちは、その事件に遭う瞬間までは普通の生活をしていたのだと、今は痛いほどわかります。
(近藤英恵)
※次回の更新は9月15日予定