コラム
【連載】オンナ万引きGメン日誌

左目の眼球が零れ落ち……万引きGメンが見た「元カラーギャング店長VS外国人窃盗犯」の地獄絵図

2018/09/08 19:00
Photo by Dick Thomas Johnson from flickr

 こんにちは、保安員の澄江です。

 先日、検事さんに呼び出されて検察庁に行ってまいりました。いわゆる検事調べというやつです。一般の方であれば、検察庁の内部に入ることなど、なかなか経験されないことでしょう。ここは世間と刑務所の架け橋のような場所なので、それも至極当然のこと。実際に、厳重な所持品検査を経て庁内に入ると、腰縄を巻かれて手錠をかけられた被疑者が警察官に連行されているところを、あちこちで見かけます。

 どのような時に呼び出されるかというと、被疑者に犯行を否認されたり、捕捉時に暴行を受けた場合や、逮捕者である私と被疑者の話が大きく乖離している時などが多いですね。明白な証拠を押収した上で、犯行現場である店内で実況見分を為し、警察署で長時間にわたって詳しい調書を作成しているにもかかわらず、法廷で否認に転じたりする被疑者の言い分に対抗するために、より詳細な検事調書を作成するのです。平均して年に1~2回のペースで呼び出されていますが、起訴されなければ日当はおろか交通費さえ支給されないので、そうした場合には公権力の図々しさを感じます。

 今回、私が呼ばれたのは、都内の大型ショッピングセンターで、高級炊飯器を盗んだベトナム人女性の件でした。「持ち出し」と呼ばれる古典的な手口で高級炊飯器を盗み出した彼女は、店の外で声をかけられると同時に炊飯器を放り投げて逃走したにもかかわらず、「金は払うつもりだった」と犯意を認めず否認を貫いているというのです。

「日本製の炊飯器で炊く米はうまい」

 昨今、アジア諸国において日本製の炊飯器は評価が高く、あらゆるところで高値売買されている状況にあります。それ故、大量に盗まれてしまうのでしょう。ダイソンの掃除機や圧力鍋、高級空気清浄器、IHコンロなどの被害も散見され、大型テレビとハードディスクレコーダーをセットで複数台持ち出した日本人の窃盗団を、腕っ節の強い仲間の男性保安員と一緒に検挙したこともありました。

 高額品を狙う人たちは、捕まれば逮捕になる確率が高いので、ほぼ確実に暴れて逃走を図ります。たとえ捕まっても、素直に認めることなく否認を続ける傾向にあるため、その悪質さにイラつかされることが多いですね。平気な顔でウソをつく人たちを目の当たりにすると、誰も信用できない気持ちになって、世の中が恐くなります。

 ここ数年、衣類を狙う外国人窃盗団も暗躍しています。もはや世界的なブランドとなったUの商品は、その機能性と品質の高さが買取相場を安定させ、瞬く間に彼らのターゲットとされてしまいました。薄くコンパクトな商品はバッグにたくさん入るため、1回の犯行による被害は過大で、売場の皆さんの頭を悩ませています。いまや現地の泥棒市場で、同社の製品を見かけないことはなく、そのほとんどが未開封のままタグ付きで販売されている始末だと、ベトナムに移住している友人に聞きました。

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