コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

シングルマザーの中学受験――“おカネ”以上にネックになる「厳しくなりすぎる母」の姿

2018/09/09 16:00

 早苗さんは中堅化学メーカーに勤める、勤続17年目の会社員である。結婚後、光君という一人息子が誕生したが、夫の不倫が発覚し、離婚。以来、光君との二人暮らしだ。光君に中学受験を勧めた理由を、早苗さんは筆者にこう教えてくれた。

「とにかく、息子の行っていた公立中学(東京都23区内学区)の荒れっぷりが尋常じゃなかったんです!」

 なんでも、1クラスしかない学年であったにもかかわらず、5年生時に学級崩壊。そのまま6年生に突入したという。

 早苗さんは憤りながら、「一番、許せなかったのは、息子がクラスメートからカッターで切り付けられたにもかかわらず、大した事情聴取も行われず、“偶然の事故”として処理されたことです。事なかれ主義の公教育にも絶望しましたし、何より、教室内でカッターを振り回すような子と、これから中学でも3年間一緒になるなんて! これだけは絶対に受け入れられませんでした」と語る。

 早苗さんは家計を1人で担っているために、当然、学費の支払いには不安があったと打ち明ける。

「ウチは、元夫の不貞での離婚なので、条件的には良い離婚なんです。自宅マンションは私名義ですが、ローンは元夫持ち。この“住居費がかからない”ということが大きかったと思います。であれば、自分の稼ぎだけでも、息子を私立という“安心安全”な環境に行かせられると思ったのです」

 私の取材経験の中でも、シングル家庭の母が中学受験に踏み切ることの理由の1つに「公教育の不安」を挙げる人はとても多い。さらに早苗さんはこう続けた。

「一番助かったのは、私立中学には“特待生制度”を設けている学校が多いことですね。息子は今、それを利用しているので、事実上、授業料は免除という形です。もっとも、成績が下がれば、翌年は特待生ではなくなるので、息子に発破をかけ続けないといけないというストレスはありますが……(笑)。この本来かかるべきお金をプールした分と学資保険で、大学進学の教育費を捻出しようと思っています」

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