【連載】紫帆ママが見た「きょうのクソ客」第9回

「本当の恋ってどんなもの?」40代の“ピュアおじさん”が、不倫女性に語った「説教」

2018/07/20 19:00

(前回はこちら) 

どうも、紫帆です。都内の某飲み屋街で小さなバーを経営している私が、夜毎の営業中に目撃したクソ客・変な客・珍事件について、お話させていただきますね。さて、今宵のお客さまは――

正論がツラい、40代の”ピュアおじさん”

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 「わたしって恋愛体質なんです」と自己申告する女性は多いですが、実際のところ恋愛に純粋さを求めるのは、圧倒的に男性のほうが多数ではないでしょうか。

 2週間に1回ほど、ふらりと訪れてくる彼もそのうちの1人です。都内の中小企業にお勤めの40代、独身。長身ではありますが横幅もだいぶ大きく、そのためか汗っかきで、頭頂部の薄毛が立ち上る湯気のように見えます。


 店に入ってくるときはいつもキョロキョロと周囲をうかがい、やや挙動不審な様子でビールを注文。そして会話もそこそこにカラオケのリモコンとにらめっこをしたのち、満を持してマイクを握り「TSUNAMI」や「真夏の果実」などのラブソングを歌い上げます。正直、歌唱力は中の下レベルですが、歌い終わったあとに「自分はこの歌の歌詞のような恋愛をしてきたんだ」と言わんばかりに、自己流の恋愛哲学を語り始めるのです。

 「本当の恋ってどんなのだと思う? 好きな人のためならすべてを投げうってもいい……それが恋ってものでしょ?」

 「いつかは、好きな人と結婚して幸せな家庭を築きたいと思うよね?」

 ――もう一度言いますが、彼は薄毛で肥満の中年男性です。いまどき小中学生でも言わないようなふんわりした恋愛トークの連続に度肝を抜かれますが、ここでひるむまいと彼の恋愛経験について聞いてみると、なんと大学時代のエピソードなどをお蔵出し(しかも、「今より40キロくらい痩せてたんだけど……」と言い訳めいた注釈付きです)。初めて付き合った彼女と夜景の見える丘の公園で愛を語らった甘い思い出を、めちゃくちゃ照れながら回想してくれます。いつしか、わたしはひそかに彼を「恋愛マスター」と呼ぶようになりました。

 ある夜、わたしの女友達が飲みに来ているところに恋愛マスターが現れました。この女友達というのが、人妻でありながら淫蕩の限りを尽くしている女性で、たびたびわたしにアバンチュールの報告をしにやって来ます。その夜も彼女はワンナイトな相手とのセックスについて話していたのですが、しばらく難しい顔で聞いていた恋愛マスターが突然、口を開きました。


 「恋愛感情がないのにセックスするのはどうかと思う」

 常、識……? 時が止まります。返答に困っている彼女を前に、さらに続ける恋愛マスター。

 「旦那さんがいるんでしょう? 女は貞操を守らなきゃ!」

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