リアル『万引き家族』の実態……万引きGメンが見た「ホームレスのような兄妹、その壮絶な暮らし」
先日、『カンヌ国際映画祭』でパルムドールを受賞した是枝裕和監督作品の『万引き家族」を、ウチの近所にある映画館で拝見しました。この記事を監修されている伊東ゆうさんが制作協力されていると聞いたので、公開されたら必ず見ようと決めていたのです。長年に渡って万引きの現場を見てきたからこそ、役者さんの凄味を余計に感じてしまったのかもしれませんが、冒頭の万引きを実行するシーンが強く印象に残りました。私自身、伊東さんのセミナーに参加したことがあるのですが、現場の実態を豊富な資料でわかりやすく解説されるので、役者の皆さんも演技の参考になったことでしょう。大変素晴らしい作品でしたよ。
実際の現場でも、親子や夫婦、兄弟、時には一家まるごとなど、家族による共犯で万引きする人たちと遭遇することがあります。なかでも幼い子どもを利用した万引きは悪質で、盗むモノを子どもに指示しておきながら、捕まった後には子どもが勝手にやったことだと居直る鬼畜のような親も多数見てきました。現場の状況から明らかな共犯関係にあるのに、「俺たちは関係ない」と、成人した子どもに罪を擦りつける老夫婦にも遭遇したことがあります。同居する彼らの、その後の暮らしがどうなったのか気になりますが、それを知る術はありません。
ベビーカーで眠る乳児の背中に、高級和牛肉を隠して外に出た若い主婦を捕まえた時には、同じ女として許せない気持ちになりました。ぐずり続ける乳児の、悲鳴にも似た泣き声と、乳児の体温で茶色に変色してしまった生肉が、いまも脳裏に焼きついたまま残っています。
夫婦や兄弟の共犯による犯行は珍しくなく、旦那の背中を使って自分の手許を隠して万引きする常習夫婦を捕まえた時には、その熟練された万引き技術に我が目を疑う気持ちになりました。後日、この件で証人として裁判所に出廷した際、夫婦合わせて三十犯以上の犯歴があると聞き、妙に納得したことを覚えています。